90歳建築家語る「早稲田のガウディ」完成の舞台裏。完成見てオーナーが思わず腰抜かす、ラブホと言われた事も
思わず足を止めて眺めてしまうような、街中にある少し変わった形をした物件ーー。 いったいなぜ、そのような形になったのか。そこには、どんなドラマがあり、どのような生活が営まれているのか。 連載「『フシギな物件』のぞいて見てもいいですか?」では、有識者や不動産関係者に話を聞き、“不思議な物件 ”をめぐるさまざまな事情に迫る。 【27枚の写真を見る】思わず見入る早稲田のガウディの装飾の数々。中に入ると驚きの光景が広がる。取材を受ける90歳の梵さんの写真も 【前編を読む】異彩放つ「早稲田のガウディ」内部の“特濃”な空間 ■完成当時はラブホテルと言われたことも
東京メトロ東西線の早稲田駅を降りて3分ほど歩くと、圧倒的な存在感を放つ建物が見えてくる。早稲田大学の大隈講堂から200mほどの距離にある交差点。その角に円柱のデコラティブな塔がそびえ立っている。遠くから眺めるとデコレーションケーキのようだ。 この建物は「ドラード和世陀(わせだ)」という名の集合住宅である。設計は「日本のガウディ」と呼ばれる建築家の梵寿綱(ぼんじゅこう)さんによるものだ(前編はこちら)。1983年の完成時の反響について、生前のオーナーと面識があり、ドラード和世陀の1階に「ドラードギャラリー」と「ドラードサロン」を構える小原聖史さんに話を聞いた。
「オーナーが健在のころに竣工当時の話を聞いたことがあります。まさかここまでゴテゴテになるとは思っていなかったようで、除幕して本当に腰を抜かしたそうです。最初はびっくりしたようですが、『だんだん慣れてきた』なんて言っていましたよ」(小原さん) そんななかで梵さんにとっては作って終わりではなかった。この分譲住宅を売らなければならない使命があったからだ。そこで雑誌『ぴあ』に無料の3行広告を出すことに決めた。
【27枚の写真を見る】思わず見入る早稲田のガウディの装飾の数々。中に入ると驚きの光景が広がる。取材を受ける90歳の梵さんの写真も 「引き渡しの前にアーティストや職人の作品発表も兼ねた建物の展覧会を開こうと考え、その告知を出したんです。そうしたら『ぴあ』が面白いと思ったのか、巻頭の枠に書いてくれたわけです。それで火がついちゃった。朝から人が並んじゃって、馬場下の交番から何ごとかと電話が入りましたもん」(梵さん)