【毎日書評】なぜ海鮮丼は「日本全国どこで食べてもほぼ同じ」になってしまったのか?
東京で食べる魚はなぜおいしくないのか?
地方から上京してきた若者などの口から、「東京の魚はおいしくない」というような思いを聞くことがあります。もちろん海鮮丼と同じく、「東京の魚すべてがおいしくない」というわけではないでしょう。しかし、たしかにそういわれても仕方がない要素があるそう。 その理由は普段の生活にある。上京してきた若者たちが口にするのは、身近な場所で買える魚だ。つまり、日常の買い物で足を運ぶスーパーなどの魚に向けられた不満である。 いわゆる「街の魚屋さん」が姿を消し続ける今、「魚でも食べようか」と立ち寄る都内のスーパーの鮮魚コーナーには、1匹「丸の魚」はあまり置かれていない。種類も少なく、そのときたくさん揚がった鮮度がよく安い魚もほとんど見かけない。 そのうえ、「消費者が調理の手間やゴミを嫌って、そのまま魚を並べても買ってくれないから、頭や内臓、時には骨まで取って店頭に並べなければならないため、その分のコストもあって売価は上がってしまう」と、大手スーパーのバイヤーは言う。(99~100ページより) 刺し身の盛り合わせや握り寿司など加工品の品揃えは、比較的どこでも充実しています。しかし地方の「道の駅」で見かけるような、漁港直送のいかにも「安くてうまい魚」を都内で手に入れるのは困難。 したがって、上京してきた若者が日常の買い物を通じて「東京の魚はおいしくない」と言う印象を強めてしまうもの仕方がないということ。 ましてや「魚より肉」といった消費傾向が定着し、若者を中心に「魚離れ」が進んでいることの影響も否定できないでしょう。しかも「若いころは肉を好んで食べ、歳を重ねると魚料理を好むようになる『魚食回帰』の傾向も近年では薄らいでいるようで、なかなか難しい問題ではあります。(98ページより) 「さかな記者」を自称している著者は本書において、知られざる魚の現状を明らかにしています。「へー、そうだったのか」と驚かされるような話題も多いだけに、多くの知見を得ることができるはず。そしてその結果、魚をよりおいしくいただけるようになるかもしれません。 >>Kindle unlimited、99円で2カ月読み放題キャンペーン中! 「毎日書評」をもっと読む>> 「毎日書評」をVoicyで聞く>> Source: 文春新書
印南敦史