順天堂大の新病院、建設決定から9年半で計画中止に…「青天の霹靂」「裏切られた気持ちだ」
さいたま市内で検討されていた順天堂大学新病院計画について、同大の代田浩之学長らが29日、埼玉県庁を訪れ、計画の中止を県側に報告した。理由として建設費の高騰などを挙げた。建設決定から9年半が過ぎ、医師確保策の目玉とされてきた計画は完全に白紙となった。 【表】 順天堂大の「新病院」を巡るこれまでの経緯
代田学長ら同大幹部と大野知事の会談は、午前9時半から非公開で行われた。出席者によると、代田学長は冒頭、「建設費の高騰、医療機関を取り巻く状況変化があって、大学として実現にもっていくことは困難となった。おわび申し上げる」と陳謝した。
それに対して、大野知事は「大きな病院ができるという県民の期待は大きかっただけに、大変残念なこと。こうした対応となり遺憾だ」と答えた。病院誘致の目的だった、医師不足地域への医師派遣について触れ「変わらぬ協力をお願いしたい」とも述べた。
会談はわずか10分。その後、大野知事は報道陣に対し「(同大から7月末に届いた文面に)計画を推進していく方向に変更はない、と書かれていたことから大変驚いている」と述べ、整備予定地周辺の住民に対して「大学から説明するべきではないか」と注文を付けた。整備予定地の活用方法については、今後検討するとした。
代田学長らはさいたま市役所も訪れ、清水勇人市長に中止を報告した。清水市長は「医療提供体制が強化され、周辺地域のまちづくりにも貢献していただけると期待していた。青天の霹靂(へきれき)だ」と衝撃を隠さなかった。
同大は29日午後、ホームページで「病院の整備計画中止について」と題する文章を公表した。判断の理由として、「総事業費が当初予想の2・6倍にあたる2186億円に高騰した」「新型コロナによる病院運営の悪化」「医師の働き方改革への対応」などを挙げた。「六つの付属病院を抱える本学は、かつてないほどの厳しい財政状況に直面している」とした。
県の公募に応える形で、新病院の建設が決まったのは2015年3月。当初は20年度に開院としていたが、その後、何度もその時期が先送りされてきた。