屋外広告を服に再生 「Paper Parade」とリガレッタのサステナビリティへの挑戦
最高難度のチャレンジだった「広告物の再利用」
ー「都市型サーキュラー」とは。 サステナビリティは、自然素材やローカリティなどに着目したバナキュラー(土着)的なアイディアが多く見られますね。しかし私は都市に住み仕事をして生きている。都市生活から生まれたものが都市の中で循環していく仕組みをクリエイティブでつくれないだろうかと考えました。 そのもっとも重要な対象のひとつが「屋外広告のアップサイクル」です。たとえばビルや駅の中、ストリートに掲示されているフラッグなどの大きな広告物。これらは「ターポリン」「遮光スエード」など悪天候にも耐えうるとても頑丈な素材を使用していますが、広告であるため通常2週間ほどで取り換えられていきます。 数年間は問題なく使える素材が、2週間で廃棄されるのです。まったくサステナブルとはいえません。広告が「使い捨て」であることは広告業界内で長年の課題になっていましたが、キャンペーン的な短期間・単発でのリサイクル事例はあっても、継続的な循環に成功した例は少なく、社会に実装していくためには課題も多くありました。 ーターポリンはファッションにおけるサステナビリティで有名なブランド「フライターグ」でも使われている素材ですね。多くの使い道がありそうですが、なぜ再生できないのでしょうか? もちろん使い終えた屋外広告を裁断して、バッグや服をつくることは充分可能ですし、社会的にも価値がある。しかし再利用の許可がとれないのです。広告は商標権・肖像権・著作権など知的財産権の塊ですから。掲出した企業、参加した芸能人やモデル、そして私のような制作サイドのデザイナーなど複雑な権利者がおり、そのすべてにOKをとることは非常に難しい。 権利委任の手続きをしている間にも2週間で新しい広告に取り換えられていき、保管するより廃棄したほうがコストがかからないため、交渉が成り立たない。屋外広告には広告業界の構造的な問題が集積しているといえます。しかし、だからこそチャレンジしたいと思いました。頼りになったのはデザイン的思考でもよく使われる「枯れた技術の水平思考」という考え方です。