帯状疱疹は、皮膚に痛みを伴う発疹が現れる。症状には個人差があるが、多くの場合はチクチク、ピリピリした痛みが皮膚に生じ、数日後に水ぶくれを伴う赤い発疹が帯状に出現。 多くは体の左右どちらかの上半身に発症するが、顔面や頭部に現れることも。日常生活に支障をきたすほど激しく痛む場合もある。 周りの人に帯状疱疹そのものをうつすことはないが、水ぼうそうになったことのない乳幼児や予防接種していない子ども、免疫力が低下する病気の人にウイルスをうつしてしまう可能性はある。 怖いのは、ウイルスが神経を大きく傷つけると、発疹が消えたあとも痛みが続き、帯状疱疹後神経痛（PHN）で痛みが数カ月続くことだ。場所によっては、失明や顔面神経麻痺が残る人もいるのだ。 このPHN（帯状疱疹後神経痛）に移行しやすいのも50歳以上で、約2割がPHNになるとされ、加齢とともに移行率は高まり、80歳以上では約3割と考えられている（＊3）。 帯状疱疹には合併症があり、重症化することもあるため、早期診断と早期治療開始が重要とされている。治療は、原因となっているウイルスを抑える抗ウイルス薬と、痛みに対する痛み止めが中心だ。 ＊3　稲田英一 責任編集：帯状疱疹Up-to-Date. p50-51, 診断と治療社. 2012　Takao Y. et al.: J Epidemiol. 25（10）, 617-625, 2015

50歳以上の人はワクチンで予防できる！

では、更年期世代は帯状疱疹予防のためにどう対策をとったらいいのだろうか。50歳以上はリスクが高いので、日頃からバランスのよい食事、睡眠など体調管理を心がけることが重要だ。 また、50歳以上の人と、50歳未満でもハイリスクの人は、帯状疱疹ワクチン接種による予防が可能。この場合のハイリスクとは、18歳以上で病気や治療によって免疫不全になった人、免疫機能低下やその可能性がある人、医師が接種を必要と認めた人だ。 帯状疱疹にかかったことがある人も、再びかかる可能性があるので油断はできない。 《Column 2》 ●帯状疱疹ワクチンを知る 【1】ワクチンは2種類。どう選ぶ？ ワクチン接種で帯状疱疹を100％は防げないが、発症や重症化を抑える効果が期待できる。帯状疱疹後神経痛（PHN）の軽減効果も。現在日本では2種類のワクチンがあり、「ビケン（生ワクチン）」は発症予防69.8％、PHN30％軽減、皮下注射1回接種、持続期間5年程度。「シングリックス（不活化ワクチン）」は発症予防96.6％、PHN88％軽減、筋肉注射2回接種、持続期間9年以上。 【2】費用はいくらかかる？ ビケン（生ワクチン）は1回7,000～1万円程度。シングリックス（不活化ワクチン）は2回で4万～5万円が目安（自由診療。医療機関によって異なる）。公費助成を実施している自治体もあり、助成額や助成対象になるワクチンの種類も自治体ごとに異なる。 【3】帯状疱疹に一度かかった人はどうする？ 免疫力低下で再び発症する可能性があるため予防接種は有効。発症後、症状の軽減後なら、接種可能だ。医師に相談を。 【4】どこで接種する？ 帯状疱疹の治療は皮膚科、治療部位によっては眼科、耳鼻科などだが、ワクチン接種は内科ほかでも接種可能。「帯状疱疹予防.jp」病医院検索サイトから全国の接種可能な病院が探せる。 「近年、帯状疱疹ウイルスがさまざまな病気のリスクを上げることがわかってきています。 帯状疱疹ウイルスとの関連が指摘されるのは、片頭痛や群発頭痛、脳血管障害、顔面神経麻痺、アルツハイマー型認知症、中枢神経の難病である多発性硬化症などです。 脳血管障害は、治療が遅れれば命にかかわる病気。アルツハイマー型認知症は、現状では根治的治療薬がありません。 それにそもそも帯状疱疹は罹患すると、とてもつらい病気です。治ったあとも痛みが続くPHN（帯状疱疹後神経痛）に悩まされ、衣服が擦れるだけで痛いという人もいます」