沖縄で見つけた楽天の秘密兵器・泰勝利 プロ3年間で一軍登板ゼロの左腕に期待したくなるワケ
高卒2年目でのトミー・ジョン手術はまさかのアクシデントだったが、あとになって振り返れば、あの出来事が転機になったと思えるようにしたい。それが今、泰の原動力のひとつだ。 【理想の投手は松井裕樹と鈴木翔天】 メスを入れて長期離脱となったにもかかわらず、育成契約からの再出発を打診されるわけではなく、支配下登録のまま復帰を目指したのも球団の期待の表れと言えるだろう。 「真っすぐは自信あります」 理想の投手は楽天入団1年目のオフに自主トレを一緒に行なった松井裕樹(パドレス)と、同じ左腕の先輩である鈴木翔天(そら)だ。 「2人とも真っすぐのコントロールはアバウトでも空振りを取れるので、そこはやっぱりすごいなと思います。ともにスピードがあって、なかなか打たれない」 沖縄のJWLではトヨタ自動車の左腕投手で、2025年秋のドラフト候補にも挙げられる池村健太郎から多くを学んだ。 「僕にないものをたくさん持っているピッチャーだと思って、一緒に練習していろいろ聞いたり、教えてもらったりしました。僕にないものというのはコントロールもそうですし、負けないピッチャーだなと。僕はフォアボールを出して打たれて自滅みたいなイメージが多いけど、池村さんはフォアボールを出して打たれても結局ゼロで帰ってくるピッチャーなので、やっぱりすごいなと。社会人は一発勝負で負けられないので、そこの強さは感じました」 明確なビジョンを持ち、どの道を進めば自分の強みをより増大できるかと見極められる思考力も泰の長所だろう。球団からは中継ぎとして期待され、自分でもショートイニングのほうが持ち味を発揮しやすいと考えている。 「キャンプスタートは一軍か二軍かわからないですけど、一軍昇格を目指してやります。そのままシーズンが始まって、二軍には戻らないぐらいの感じで初登板を終えて、一軍に定着したいです」 松井裕樹と同じくらいの背丈から、引けを取らないような速球を投げ込んでいく。長身の鈴木翔天とは少しタイプが違うだけに、ブルペンに加われば左腕二枚看板になれる可能性も十分にある。 まだまだベールに包まれた快速左腕は2025年、楽天を上位に導く一枚になるかもしれない。
中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke