沖縄で見つけた楽天の秘密兵器・泰勝利 プロ3年間で一軍登板ゼロの左腕に期待したくなるワケ
「今日はファウルを取りたい球が前に飛ばされて、ヒットも2本打たれました。その後はファウルを取るとか考えず、とりあえず腕を振って真っすぐで押していくという感じでいって、チェンジアップなどで三振も取れました。後半にかけてよくなり、特に最後の2人はよかったですね」 筆者はベンチ脇から写真を撮影していて、その後バックネット裏に移動し、泰の投球に目を凝らした。それがたまたま最後の2人で、本人の納得いく球を見逃さずに済んだ。 裏を返せば、不安定さを抱えているということだ。実戦復帰して間もないことに加え、投球フォームを見直してまだ日が浅い。 「リリースを下げ気味にしました。以前は上半身でガッといって、無理やり投げていたので。安定的に投げられるようにちょっとリリースを下げて、テイクバックも少しコンパクトにしました」 スリークォーターより少し低い角度から、糸を引くような速球を投げていく。それが、筆者が目を奪われたストレートの球筋だった。 身長172センチと上背はないが、上半身はがっしりしている。リハビリ中、トレーニングに打ち込んだ成果だろう。 対話をしていて感じたのは、泰のクレバーさだった。まだ実績のない若手選手で、彼ほど理路整然と自分のことを語れる選手は決して多くないだけに、印象に残った。 なぜ、自分は左ヒジの靭帯断裂に至ったのだろうか。泰が投球フォームを変えることに決めたのは、そう考えたからだった。 「150キロくらいしか出ていなかったので、それで切れるっていうことはフォームが絶対悪いので。160キロとか、スピードがすごいっていうわけではなかったので、フォームが悪いだろうなと思って改善しようと思いました」 投手を始めて以来、初めての大きな故障だった。当然、長いリハビリも初めてになる。マウンドに戻るまで、試行錯誤の連続だった。 「投げながらフォームを探していきました。そのなかでリハビリの痛みなのか、投げ方が悪くて痛いのかが本当に紙一重というか、わからなかったです。手術をしたのも、こんなに投げなかった期間が長いのも初めてでしたし......。実戦復帰するまで、特にテイクバックは悩みました」