ビットコイン規制はどう変わる──動き出した金融庁、ザワつく金融界と暗号資産業界
業界を驚かせたブルームバーグの9月報道
9月最終日、ブルームバーグは金融庁が暗号資産規制の見直しに着手すると報じ、業界を驚かせた。 記事の内容は、日本でビットコインなどの暗号資産は現在「資金決済法」の下で規制されているが、今後の議論によっては暗号資産が「金融商品取引法(金商法)」の対象となる可能性があるというもの。 暗号資産を取引する一般消費者の目的が、多くの場合は「投資」であることから、金融庁は、暗号資産を資金決済法で規制している今の仕組みが適切かどうかを、今後数カ月で検証するという。もし、現行の規制は投資家を保護するには不十分であると結論付けた場合、資金決済法を改正するべきか、または暗号資産を金商法の対象とするべきかを議論する。 もし仮に、「暗号資産は決済手段ではなく、むしろ金融商品・金融資産である」と位置づけられ、金商法で規制されるべきと判断された場合、暗号資産の税制改正を訴えてきた暗号資産業界にとってはプラスとなる可能性がある。また、ビットコインが金融商品・金融資産となれば、ETFの国内組成・上場の現実味は一気に増してくる。 しかし、金商法の下で暗号資産が規制されるとなると、投資家保護の強化を含めて、厳しい規制圧力がこの業界にのしかかってくることが予想される。 関係者に取材すると、金融庁が行っている見直し作業は少なくとも年末まで続く模様だ。現時点で、議論の方向性は決まっておらず、飽くまでも「ニュートラル」な立ち位置で議論が進められている。
ビットコインETFが生まれても新たな壁が
ビットコインETFが国内で誕生し、東京証券取引所がその上場を承認したとしても、資産運用会社は新たな課題に直面するだろうと、丸の内界隈の某金融マンは話す。 ファンドを運営するには、投資家から集めた日本円を元に、大量のビットコインを競争力のある価格で調達する必要がある。 機関投資家向けの大口のビットコイン取引を捌(さば)いてきたという実績は、日本にはない。加えて、日本円でビットコインを海外から調達できたとしても、その決済には日本円を売り手に送金する必要がある。 国内の暗号資産交換業者を経由した取引を行う場合、海の向こうの売り手の身元確認(KYC)は、マネーロンダリングとテロ資金供与の防止(AML/CFT)の観点から求められる。ビットコインを調達する上での法定通貨による国際送金は、主にメガバンクを介して行うことになるが、メガバンクはこれに似たケースでの送金依頼を拒んできた過去がある。 銀行にしてみると、マネロン防止の観点から、過去に事例のない送金取引を請け負うことは、外国為替業務全体に影響を与えるリスクとなる。そのリスクをとってまで、暗号資産関連の送金業務を請け負わなくても良いだろうと判断したとしても不思議ではない。 一方で、ビットコインETFが日本で上場されるようになれば、それに伴う新たな事業が国内でも生まれてくる。ETFを運営する際に、ビットコイン現物の保管・管理を担うカストディサービスは、米コインベースが広げてきた暗号資産の付帯事業の1つだ。 また、ビットコインを原資産とする大型ファンドが組成されるようになれば、ビットコイン現物の大口取引を巧みに行う手法が国内でも確立してくるだろう。