ビットコイン規制はどう変わる──動き出した金融庁、ザワつく金融界と暗号資産業界
投信法がダメなら信託法でETFを作れないか?
ならば、「信託法」という別の法律の下で、「受益証券発行信託」と呼ばれる手法を使って、ビットコインETFを作ることはできないか。 どういうことかと言うと、この「受益証券発行信託」とは、資産を信託して「受益証券」と呼ばれる有価証券にすることで、その資産の取引や流通を促すという仕組みをいう。実際、このスキームを使って上場信託を組成したケースが過去にある。 「金の果実」の名前で、三菱UFJ信託が2010年に東証に上場させた純金(ゴールド)に紐づくファンドだ。受益証券発行信託のスキームであれば、投信法の上での「特定資産」という概念はなく、「金の果実」が誕生したのと同様に「ビットコインの果実」のような上場ファンドを作ることはできないだろうか? ただし、「金の果実」ファンドは投信法に縛られていないものの、純金というコモディティは投信法の特定資産に含まれている。 「法的・制度的に不可能ではない。探求する価値はあるが、前例がない」と、金融界隈からは聞こえてくる。 2つ目の壁は、日本の暗号資産業界ではもはやお馴染みの「税制」だ。
ビットコインがビットコインETFに奪われる?
日本の法律では、暗号資産所得は雑所得となり、税率は最大で55%の総合課税。一方、ETFの売買から得られるリターンは分離課税となり、一律20%だ。 仮に、ビットコインETFが誕生し、それに課される税が20%の分離課税であれば、ビットコインの現物に対しても分離課税にするべきといった主張が聞こえてくる。現行の税制度でビットコインETFが生まれると、ビットコイン現物の取引サービスとビットコインETFとが競い合うかたちとなり、結局一定数の投資家は税率の低いETFに流れていってしまうと、一部の暗号資産交換業者は主張する。 暗号資産取引サービスの業界団体、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は、暗号資産所得の総合課税を分離課税に移行させる提言を政府に提出しているが、日本の税制を変えるのはそう簡単ではない。 そもそも、多くの株や債券が個人の「長期的・安定的な資産形成」を保証できるとは思えないが、ビットコイン・ブロックチェーンとイーサリアム・ブロックチェーンのネイティブトークンである「ビットコイン(BTC)」と「イーサリアム(ETH)」に紐づくETFは、米国においては個人が資産を形成する上での1オプションとして機能すると判断された。 実際、カリフォルニア州政府はブロックチェーンを活用して、自動車の登録業務のデジタル化を進めるプロジェクトを進めている。米国の「長期的・安定的」な経済と社会の基盤を再構築する上で、ブロックチェーンはその技術基盤の1つになろうとしている。 ワイオミング州政府は、ブロックチェーン上で米ドルに連動するステーブルコインを発行する計画を打ち出し、それを実現するための法律を策定した。