10億超の鳴き声を分析、ネコ語翻訳AIアプリの実力は? 生みの親と研究者に聞いてみた
ネコの意図を90%の精度で分類できる
ドレイジン氏が同僚のマーク・ボーイズ氏と新しいアプリのヒントになるデータを探していたとき、2019年の研究に出会った。ネコの鳴き声には共通の特徴があるという内容だった。 研究チームはこの事実を発見した後、おとなのネコ21匹の鳴き声を分析するコンピュータープログラムを作成した。餌を待つ、ブラッシングされる、慣れない環境に置かれるという3つのシナリオを用意し、そのときの鳴き声を録音して使った。 ネコたちはそれぞれのシナリオで、コンピュータープログラムで分類可能な特定の鳴き声を発した。 そこで、ボーイズ氏とドレイジン氏は録音された何万もの鳴き声を使用し、人工知能(AI)搭載のコンピューターモデルを開発した。 これがうまくいった。2021年の研究で、にゃんトークはネコの意図を90%の精度で分類できるという結果が出た。
鳴き声が理解できないのは問題ではない
それでも、ドレイジン氏とボーイズ氏は、AIプログラムは完璧ではないと強調している。研究者のボンク氏とドゥ・ムゾン氏も同意見だ。 ボンク氏とドゥ・ムゾン氏もにゃんトークをダウンロードしたが、結果はさまざまだった。アプリはドゥ・ムゾン氏の飼いネコの鳴き声を「好き」と翻訳したが、ドゥ・ムゾン氏は正確ではないと感じた。 「多くの情報が欠けているんです」とドゥ・ムゾン氏は言う。「そのとき、飼いネコは食器のそばに座り、餌をねだっていました」 ボンク氏はFluentPetについても懐疑的だ。ネコは飼い主に何を伝えたいかを自覚しているため、ボタンを押させることは物事を複雑にすると指摘している。 ある程度の推測は避けられないものの、ネコの合図やボディーランゲージに注意を払うだけでも大きな助けになるとボンク氏は考えている。 ドゥ・ムゾン氏によれば、実際、ネコの姿が見え、声も聞こえる状況では、飼い主の方がネコの気持ちをはるかにうまく解釈できるという。 結局のところ、飼いネコの鳴き声が理解できないときは必ずあり、それで問題はない。「コミュニケーションとは、ネコと飼い主の共同学習なのです」とドゥ・ムゾン氏は語る。
文=Carrie Arnold/訳=米井香織