予想以上! 約3.3億円でメルセデス・ベンツ「300SLロードスター」が落札…希少なボディカラーと新車当時のレストアが高値の理由でした
54年間、ファーストオーナーの家族内で保管されていた個体
RMサザビーズ北米本社は2024年5月31日~6月1日に「The Dare to Dream Collection」オークションをカナダ・トロントにて開催しました。今回は、メルセデス・ベンツ「300SLロードスター」の車両解説と、注目のオークション結果についてお伝えします。 【画像】希少なオリジナルカラーのメルセデス・ベンツ「300SL ロードスター」の内外装を見る(全40枚)
1950年代における世界最速オープンスポーツとは?
1957年、初代メルセデス・ベンツ「300SL “ガルウイング” クーペ」がフェードアウトするのと時を同じくして、後継の「300SL ロードスター」がその年のジュネーヴ・ショーにてデビューした。 300SLのオープン化は、その最大の特徴である鋼管スペースフレームの再設計を意味し、ルーフ構造の喪失を補うためにシャシーは大幅に強化された。でもオープン化により「ズーパーライヒト(SL)」の性能が低下してしまうというマニアたちの危惧は、まったくの杞憂に終わったようだ。 新型300SL ロードスターは、少なくとも公道走行という観点からは、ほぼすべての面でガルウイングを改良したもの。フルシンクロ化されたギアボックス、大幅に改良されたエンジンのメカニズム、スタビリティを増した新設計のリアアクスル、顧客が幅広い選択肢から選ぶことのできたファイナルドライブのおかげで、300SL ロードスターは公道で最も速い自動車のひとつであり続けたうえに、燃料タンクを小型化し、リアのオーバーハングを延長することで、ガルウイングの弱点だったトランクスペースも拡大していた。 セレブリティやレーシングドライバーなど、成功者たちのガレージにも数多く収められた定価1万1000ドルの300SL ロードスターを所有することは、ほとんどの人にとって夢のまた夢だった。しかし、資金に余裕のある人にとっては、このクルマに対して支払う予算には1ペニーとてムダのないものだった。
いまなお魅了し続ける300SL
この新型メルセデス・ベンツは、デビュー時にもちろん衝撃を与えたが、驚くべきは、この特別なマシンがその後の60年間、いかに世界のモータリストを魅了し続けたかということである。アメリカでもっともプレステージの高いとされるクラシックカーラリー、「コロラド・グランド」の2016年版で、1957年型の300SL ロードスターをドライブした米『Motor Trend』誌のローリー・ジュルネッカ氏は、以下のように語っている。 「最終日の朝、クルマに乗り込むと、毎日300SLをドライブすることがいかに普通になっているかに突如気づかされた。このクルマが本質的にスチールやアルミのボディの下にあるレーシングカーだということだけではない。私たちが乗っているこのクルマが、現在の市場で100万ドル以上の価値があるということでもない。1957年に製造されたもので、私たちが毎日数百マイルも走行しているにもかかわらず、それほど疲れを感じず、故障にも見舞われないということでもない。本当にすごいのは、それらの組み合わせなんだ」 くわえて、クローズドとオープンエアの両方の「ズーパーライヒト」については、世界中のアクティブなオーナーからなる強固で緊密なコミュニティが存在するのも、300SLという偉大なスーパースポーツの重要な側面といえるだろう。