巨大化する自然災害対策に正解はある?日本も検討、強力権限の米国機関とは
避難させるかさせないか、それが問題だ
一方、「テキサス人の面倒はテキサス人がみる」がキャッチフレーズのテキサス州。そのせいかはわかりませんが、今回、連邦政府に助けをもとめるのもゆっくりでした。 「ハービー」で結果的には甚大な被害を受けた全米第5の大都市ヒューストン市(670万人)も、避難「指示」さえ出ませんでした。上陸前になって州知事が、低地や沿岸地の住民に避難を「推奨」し始めましたが、地元関係者がそれに異を唱え、「(大文字で)地域リーダーが地域のことを一番よく知っている!」とツイートするなどして、ヒューストン市民に慌てて避難しないよう呼びかけたくらいです。 実はテキサス州にも2005年のハリケーン「リタ」という苦い経験があるのです。この時も避難指示は出ていなかったのですが、恐怖に駆られて自主的に避難した人たちが作り出した交通渋滞で、事故や熱中症、バス火災などが起き、100人超が犠牲になりました。 それに洪水で犠牲になるのは多くの場合、車中の人たち。そのうえヒューストンのような大都市の住民を避難させるには、莫大な時間とお金を要します。人の命には代えられませんが、その判断は非常に複雑で難しいものです。
対照的なハリケーン対応でもジレンマは同じ
つまり、テキサス州の災害対策がフロリダ州に比べてどうか、といった話ではないのです。 前述したようにスタフォード法やそれに付随する国家対応枠組みはどの州にもすべからく適用されますし、各州、各市町村、特にハリケーンが上陸することの多い南部の州では、かなりしっかりと災害対応策が練られています。 それでも、予測しきれない自然の動きや政治的な立場、お金などの要素がからみにからんで、大事な人命と生活のことであるにも関わらず、どれが「正解」なのかはっきりさせることができないのが、自然災害対策の宿命なのかもしれません。 そういえば、ニューヨーク州に大雪予報が出たある年、アンドリュー・クオモ州知事が本格的に降り始める前日の夕方から、ニューヨーク市内の地下鉄を全線操業停止にしたことがありました。皮肉なことに結局大した降雪にならなかったことから、その後彼が受けた批判のすさまじかったこと。 翌年の大雪ではすっかりおとなしくなってしまって(?)、地下鉄が止まることはありませんでした。公立学校を休校にするかは市長の判断ですが、これもへたに全校休校にして期待はずれの降雪だったりすると、仕事に行かなきゃいけないわ、子どものシッターを探さなきゃいけないわとなった人たちからブーイングの大合唱。ハリケーンならぬ大雪でさえこんな調子です。