巨大化する自然災害対策に正解はある?日本も検討、強力権限の米国機関とは
ハリケーンの場合はまず「大統領災害宣言」ありき
ハリケーンがその他の自然災害やテロなどの緊急事態と異なるのは、ほぼ「起こる」こととその規模が事前に分かっている点です。 そのため通常は、災害等が発生した場合、その対応には現地の警察や消防といった初動対応機関(first responder)→市町村などの地方政府→州政府→連邦緊急事態管理庁(以下FEMA)という流れがあるのですが、ハリケーンの場合は、その進路上にあるとされる州の州知事が、甚大かつ広範に及ぶ被害を想定して「州緊急事態宣言」を発動するところから始まります。 その後、州レベルではとても対応しきれない旨を示すデータや対応計画をFEMA経由で大統領に訴え、連邦政府の支援を要請。これを受けて大統領が「大統領災害宣言」に署名したところから、連邦政府・州政府・地元政府および米赤十字社、そしてNGOなどの連携が開始されるのです。ちなみにスタフォード法により、連邦政府はこれらすべての費用を最低75%まで負担することになっています。
テキサス州を襲った「ハービー」ではハリケーン上陸後に…
就任後初の大規模自然災害に直面したドナルド・トランプ大統領が、この「大統領災害宣言」を発令したのは、「ハービー」が8月24日夜に上陸したタイミングでした。 宣言直後にはぬかりなく、「政府の支援パワーを全面的に解き放った!」と、お得意のツイッターによるアピールも。しかし、これまでの大統領は上陸前に必ずこの宣言を発していました。なにしろ連邦政府による支援、そして州政府や地方政府との連携のゴーサインです。 ところでトランプ大統領が指名したFEMAの新長官ブロック・ロング氏は、ハリケーンの直撃には慣れている、南部アラバマ州の緊急事態管理機関を率いていた人物。災害対策コミュニティーからも高い評価を受けています。 連邦政府の災害対策の屋台骨であるFEMAは、上陸直前までに9万6000リットルの飲料水と30万6000の非常食、そのほかにも毛布やブルーシートなどをテキサス州の空軍基地に設置された対策本部に確保していました。このスピードと規模は、実際に大きな被害を受けることになった当のテキサス州政府だけではとても実現できないものだったでしょう。