巨大化する自然災害対策に正解はある?日本も検討、強力権限の米国機関とは
フロリダ州はハリケーンのプロ?
ちなみに、テキサス州のグレッグ・アボット州知事がトランプ大統領に災害宣言を要請したのは、ハリケーン上陸当日の朝でした。「ハービー」と「イルマ」では規模も性質も異なるので一概には言えませんが、数日前には州非常事態宣言を出して、住民に避難を呼びかけていたフロリダ州のリック・スコット州知事とかなり対照的といえます。 フロリダ州には1992年のハリケーン「アンドリュー」という非常に苦い経験があります。フロリダ州南部を中心に大きな被害を受け、犠牲者は65人、265億米ドルもの経済損失が生じました。 ある知人は当時、テレビに映し出された「アンドリュー」直撃後のマイアミ周辺の様子が、「とても米国の街とは思えない破壊されぶり」で、衝撃を受けたことを思い出したと語っていました。彼は母親がその後、フロリダ州南部で老後を過ごすために引っ越したことから、ハリケーンが来るたびに駆けつけるのですが、今回はさすがに母親をちょっと北部に移動させ、何とかやり過ごしたそうです。 もともとハリケーンの進路上にあたりやすいフロリダ州は「アンドリュー」以来、建築基準を厳しくかつ細かく定めるなど、ハリケーン災害に備えつづけて今日に至りました。 住民もある意味「ハリケーン慣れ」していますが、これには二つの側面があるといえます。そのひとつを象徴するのが、今回もテレビでも繰り返し流された、ハイウェイに延々と続く渋滞です。ハリケーンの恐ろしさを誰よりも知っているから、反応も行動も早い。 一方、住民が避難してほとんどゴーストタウン化した街に、「前回も前々回も結局大丈夫だったんだから、今回も大丈夫」と残る人たちもやはりいます。理由は様々です。たとえば自分の大切な家が被害にあっても、ひとたび避難してしまえばなかなか戻ることができないことを心配していたり、移動するのが難しい病人や高齢者を家族の中に抱えていたり……。 マイアミビーチの市長は上陸当日、「我々が求めているのは(災害後に助け合う)ヒーローではない、ちゃんと安全を確保する住民だ」と言って、避難を求めていました。 避難「命令」とはいっても、力づくで強制し、従わなければ罰則を科す権限を州が持っているわけではないので、最終的には個人の判断に委ねられます。ただ残った人たちを「自己責任」と完全に放置することはなくて、サンドバッグを配布したり、ホームレスを避難所に移動させたりと、地域レベルの対応が行われていたようです。