重い、値段が高い…でも大ヒット!“世界で一番お肉がおいしく焼ける”!?フライパン
活路が見出せない中、ヒントをつかんだのが行きつけの「焼肉 松阪」だった。 「子どもの頃から父親と来ていて、お店で食べるとめちゃめちゃおいしいんです。たまに親父が『家で酒を飲みたい』と言って持ち帰りをして家でホットプレートで焼くと、肉は一緒なのにその味が出ない。その頃から疑問を感じていました」(石川) 石川が目を止めたのは鉄板だった。以来、焼肉店に通いつめて鉄板を調査。「分厚さ」が肉のおいしさを左右すると確信し、「分厚いフライパン」作りを決意した。 「『焼肉 松阪』に来たからフライパンを作れたかもしれない、感謝です。あと、あまり触っていろいろやっていると、お店の人に『触らないで』と怒られます(笑)」 構想から約10年たった2017年12月、「おもいのフライパン」発売にこぎつける。地元・碧南市の「ふるさと納税」の返礼品にも採用されると、SNSでバズり始めた。そしてコロナ禍には、「おうちごはん」や「キャンプ飯」にうってつけのアイテムとしてファンを一気に増やしたのだ。
外食チェーンも熱視線~目指す町工場改革とは?
「おもいのフライパン」の成功で外食チェーンからも声がかかるようになった。 東京・大田区の「みそかつ 矢場とん」羽田エアポートガーデン店の人気メニューの一つが、特製の味噌だれをかけて食べる「鉄板とんかつ」。このメニューに使われているのが石川鋳造の鉄板だ。この店で試験的に導入され、今後は全店舗に広げる予定だという。 「以前使っていたものはもう少し薄くてすぐに冷めてしまって、お客様の前で味噌だれをかけた時に湯気が立たなかったこともあった。石川鋳造さんの鉄板を使うと味噌のいい香りが出るので、お客様からも好評です」(店長・野口真二さん)
石川鋳造はいまやフライパンだけではなく、社内には新商品の開発にあたるチームがある。工場で働く職人や、営業・総務の社員など、部署をまたいで編成されている。 この日、考えていたのは卓上コンロで使える深型鍋。テスト調理が米で行われていた。 「おもいのフライパン」と同様、こびりつかない。さらに、蓋をひっくり返せば、蓋が「おもいのフライパン」になる。 「うちの炊飯器はそこそこのものだけど、それで炊くよりおいしい」(総務部・石川寛子) フライパンのヒットで、仕事への取り組み方にも変化が起きた。 「現場の人と関わることがそれまでなかったんです。フライパンの商品開発に関わるようになってから初めて現場に入った。その時がすごく楽しかったです」(営業部・榊原明子) 「おもいのフライパン」がきっかけで入社したのは入社4年目の磯貝佳樹だ。 「『おもいのフライパン』をどうやって作るのかなと。自分は肉が大好きなのでそれで応募しました」(磯貝) 「おもいのフライパン」は消費者との向き合い方も変えた。