「死にたい人放っておけない」相談者の悩みに寄り添い続ける女性住職 #今つらいあなたへ
「命の門番」と位置付けられるゲートキーパーの役割
中田さんは僧侶になる前の勤め先で、身近な人を自死で失った。「もっと自分にできることはなかったのか」。こんな答えの出ない思いがグルグルと頭を巡った経験もある。だからこそ、死にたい気持ちを訴えるような切迫した投稿にはできるだけ早く答えるようにしている。一人きりで悩みを抱え、やっとの思いで投稿したのだろうと感じるからだ。一度つながれたら、その後は丁寧な伴走支援が続けられる。「最初のきっかけ、相手とつながる、関係を築くということが大事だと思っています」。 悩んでいる人に気づき、声をかけていく人を「ゲートキーパー(命の門番)」と呼ぶ。中田さんもそのひとりだ。特別な資格を要するものではなく、医師や保健師、行政などの担当者から一般市民まで、それぞれの立場で周囲の人が示す自殺のサインに早く気づいてあげることが期待されている。具体的には①変化に気づいて声をかける「気づき」、②本人の気持ちを尊重して耳を傾ける「傾聴」、③支援先につなげる「つなぎ」、④温かく寄り添いながら見守る「見守り」の4つの役割が厚生労働省のサイトにも示されている。
同じ歩幅で見守る伴走支援
「中田さんは命の恩人です」。こう話すゆきさん(30代女性)は、中田さんとは7年ほどメールのやり取りを続けている。それまでは相談した相手からの批判や拒絶を恐れ、誰にも悩みを話せずにいた。「それでも誰かに相談しないと心が壊れてしまう」と、すがる思いでハスノハに投稿したという。ゆきさんには、産んであげることのできなかった子供がいた。その命を思い、自分を責めたり悩んでしまったりすることもあったが、その気持ちを支えたのは中田さんの存在だった。ゆきさんの状況をそのまま受け止め、それに対し否定も肯定もしない中田さんの中立の言葉や、旅立った命は仏の国にいるという仏教的な命の解釈を語り合うといったやりとりだった。同じ不安がこみ上げ、同じ質問を繰り返すこともあった。それでもいつも変わらぬ言葉を返してくれる安心感が支えになった。今でもふとしたきっかけで気持ちが揺さぶられることはあるが、「もうあの頃と同じ状態には戻らないと思う」と話す。