「死にたい人放っておけない」相談者の悩みに寄り添い続ける女性住職 #今つらいあなたへ
ミルクティーさん(30代女性)も、中田さんとやり取りを続けて4年ほどになる。幼い頃から重複する精神疾患があり、「ずっと生きづらさを抱えて苦しい」と、休みの間も普段の生活でも、どんな状況でもなくなることのない心身の苦しさを抱え続けてきた。それでも、自分には中田さんと相談できる環境があるから「今を生きていける」という。「今もつらいときや、消えたい、死にたいって思うときはいっぱいありますが、一緒に乗り越え、逃げ出せるって思える」。中田さんとの合言葉は、「ずーっと一緒に進む」だ。 中田さんは伴走支援について「抱っこするように受け止めて、頼りきりになる依存状態にさせてしまうのは、その人のためにならない」と指摘する。頼りきりになると、なかには相談者が自分の人生の選択をゲートキーパーに委ねてしまうこともある。その状態が心地よく感じると、やがて相談者はそこで歩みを止めてしまう。 中田さんは、自分の役割を「その方の、生きる本来の力を信じて一緒に歩くこと」だという。相談者の歩幅に合わせてともに歩き、自分の力で歩けるようになるまで時間をかけて見守り続けることが何よりも大切なのだ。 多くの相談者は、落ち着いたと思ってもまた押し寄せる心の波を、長期にわたり経験している。気持ちが落ち込んだ時に相談できる存在が自分の中にあることや、いつでもつながっているという安心感は、立ち上がって歩んでいこうとする人の強い支えとなっている。
死にたいという思いまで追い込まれてしまう前に必要な居場所づくり
中田さんは、自死を考えたことがある相談者の声に耳を傾けてきた。そこで感じたのは、多くの人は衝動的に死にたいと思うのではなく、複数の要因の蓄積や絡み合いの末に死へ追い込まれてしまうということだ。そこでようやくゲートキーパーにつながれたとしても、一つひとつの要因を解きほぐし、その人が前を向けるようになるまでには長い道のりが続く。 コロナ禍の2020年、10年ほど減少が続いていた自殺者数が増加に転じた。2022年11月の日本財団の自殺に関する意識調査では、自死を考えた経験のある人のうちの6割が「どこ(だれ)にも相談しなかった」と答えた。理由は「相談したいと思えなかったから」が最も多く、死にたいという思いを相談することへの抵抗感を多くの人が抱いていることがうかがえる。 中田さんはゲートキーパーとしての活動に加え、悩める人たちの居場所づくりにも取り組んでいる。追い込まれる前に気軽に話せる場があればいい、話に耳を傾けられる人がもっといればいいとの考えからだ。