「死にたい人放っておけない」相談者の悩みに寄り添い続ける女性住職 #今つらいあなたへ
「おしゃべりカフェ ひだまり」は、和歌山市内の寺のスペースを借り、寺のコミュニティー内の約20人がボランティアで運営している。誰でも入りやすい、ホッと安心できる空間づくりを心がけ、お茶やお菓子、託児スペースも用意している。話す時はお互いの気持ちを尊重し、話せない、話したくない時はそれでもいい。そこでの話は秘密厳守というルールもある。 悩みを聞く相談員の心構えや傾聴スキルも重要だ。相談者の気持ちに寄り添い、相手の立場で考え、あるがままの状態を受け入れる受容と理解、そして共感が大事になる。ところが、ときには聞き手が相談内容と自分の過去を重ねて気持ちが揺さぶられることもある。場合によっては、聞き手をバトンタッチできる仲間がいると、聞き手も心強い。 「学びと実践の両輪が大切」と考える中田さんは、仲間とともに、悩みの事例検討や傾聴トレーニングを重ねている。訓練を通して交流や意見交換を重ねることで、相談を聞く仲間同士が互いに話しやすく、居心地の良い関係性を築くことを願っている。お互いの背景を理解しながら、横のつながりを持つことで、仲間同士の助け合いができるからだ。そうすると、仲間の変化にも気づける。お互いに気を配り、無理をせず、させないことが重要だ。
誰もが「聞ける人」になれるために
7月のある日、中田さんを含め8人のボランティアメンバーが「ひだまり」に集まった。2カ月に1回ほどのペースで、実際にあった事例を使って相談のロールプレイをしているのだ。相談者1人に対して相談員2人の配役を決め、5分から10分程度で1ロールを行う。ひだまりで相談を受けるときと同様に、相談員は2人以上で対応するようにしている。一人の相談員が、相談者の言葉や表情を見逃すことがあっても、別の相談員が気付き、関わっていけるようにするためだ。 この日使った事例の一つは、職場での人間関係の悩みだ。「同僚や上司から無視されている」と言葉を絞り出す相談者に、「それはしんどいですね」と相談員が共感を示す。無視が始まった原因を「自分の思うことを言い過ぎたみたい」と振り返る相談者に、それを肯定しようと「でも、ちゃんと自分を持たれていて素晴らしい性格」とほめ言葉をかけたが、相談者の表情はさえない。