「頻繁に停電」「だがグラウンドには300万円の機械が」…。貧困国ドミニカで「野球選手」夢見る少年たちの“悲哀”とは?
ロープウェーの道中では、小学生くらいの男の子がハロウィーンのような仮装をしてお金を求めてくることもあった。お菓子を求めてくるのであればかわいいのに、彼らは常にお金を求めていた。 この国の1人当たりGDPは、1万111ドル(2022年/外務省HPより)。一方で、日本の2022年の1人当たりのGDPは3万4064ドル。これは円安の影響を大きく受けた金額で、前年だと4万34ドルだ。 だから、私が頭の中で思い描いていたドミニカは、「1000円で豪勢な食事ができる場所」だった。しかし、実際に現地を訪れてみると、物価は想像の何倍も高かった。むしろ日本とそこまで変わらないくらいだった。
そんな毎日の食事にも困る開発途上国でも、そこに生まれた子どもたちは生活していく必要がある。そんな子どもたちが何に夢を見出すか。それは、メジャーリーグだった。 途上国では、唯一の資本である身体を利用して、農業などの第1次産業に従事して生活することがオーソドックスだ。国内の経済が豊かでないなら、自給自足することで生きていく必要がある。 ただし、同じ身体を使う仕事でも、もっと外貨を稼げる仕事がある。それが、野球なのだ。
■両親への恩返しの夢を語る子どもたち 幼少期の頃から彼らの心の奥底には、お金を稼ぐことが刻まれている。 そんなことを感じたのは、私が所属していたアカデミーの少年たちと、Instagramのアカウントを相互フォローした時だった。彼らのInstagramのプロフィールには、とある共通点があったのだ。最も若くて13歳の選手にすら、当てはまっていた。 それは、プロフィールにある、「ドル」の絵文字だ。 そして、ストーリーにはパパやママにお金を稼いで恩返しをする決意が載せられていた。スターになって両親に家をプレゼントするんだと、中学生の選手は笑いながら決意を語っていた。
私自身の中学生時代を振り返ると、クラブチームと学習塾の高い月謝を払ってもらいながら、両親に悪態をついていた。 私は当時の自分を恥じた。と同時に、両親への恩返しの夢を語る彼らに、敬意を抱いた。どんなに経済的に貧しくても持っている、唯一の資本である身体を通じて彼らはお金を稼ぐ強い意志を持っているのだ。 ■メジャーリーガーになることが唯一の勝ち筋 それでは、どのくらいの確率でメジャーリーガーになれるのだろうか。関係者に聞いたところ、「各アカデミーの各年代に、1人くらい」という話だった。