「頻繁に停電」「だがグラウンドには300万円の機械が」…。貧困国ドミニカで「野球選手」夢見る少年たちの“悲哀”とは?
そこでは、すでにマイナー契約による契約金を得た選手たちが、メジャーの潤沢な資金によって、何不自由なく育成される。前述したように、とにかく充実した環境なのだ。 そこでは、日本の野球ファンが想像するようなハングリーさは養われにくい。ドミニカで下部組織の、アカデミーに所属していた経験を持つ人から、こんなことを聞いたことがある。 「ハングリー精神なんてまったくない。綺麗なグラウンドで野球に打ち込み、ご飯は食べ放題。ユニフォームは洗濯される。道具だって支給されるし、契約金が数億円の選手もいる」
■さらに下のアカデミーも、環境は整っていた 一方で、私がドミニカで滞在したのは、2つ目のメジャー球団の下部組織を目指すアカデミー。つまり、マイナー契約を目指すアカデミーだ。 ②メジャーの下部組織との契約を目指すアカデミー:①のエリート養成校に入るための学校 「アメリカ資本ではなく、あくまでも現地資本のアカデミー。マイナー契約を目指すアカデミーなんだから、貧乏暮らしなんだろう。ボロボロの布みたいなグローブでプレーしていて……」
そんなふうに思う読者もいるかもしれないが、実態は違っていた。むしろ、強豪の下部組織を目指すアカデミーに所属している選手たちでも、すでに食事や野球道具など、野球に必要なものはすべて支給されていたのだ。むしろ、私よりも良い道具を使っている選手も少なくなかった。 もちろん、彼らの中には貧困さゆえ、道具を自分で購入できない人もいるので、比べるのはおかしい。 ただ、予想を裏切られた私としては、「野球がうまければ、たとえまだ少年であっても、豊かに生活できる国なんだな」と思ったのだった。
■とは言え、貧困は紛れもない事実だ アカデミーによって、規模感やレベル感に差はある。ただ、どんなアカデミーでも、選手たちに共通していることがあった。それは、「マイナー契約を果たして、契約金を獲得する。そして、メジャー昇格を果たして、メジャーリーガーになる」という、夢を持っていることだった。 ドミニカの国民は一般的に豊かではない。私が首都のロープウェーに乗っている時に、街を上から見下ろすことができた。そこには、文字通りボロボロの家が乱立していた。