【女性リーダーと業界話】 政治の世界と同じく、世界最下位レベル 自動車業界はなぜ、女性リーダーが少ないのか?
1986年改正の男女雇用機会均等法との関係は?
技術職を中心に男性従業員が多い製造業ではとくに女性管理職の割合が低くなる傾向がある。 トヨタの3.7%も衝撃的な低さだが、トヨタグループであるデンソーは1.8%、豊田自動織機1.7%、愛知製鋼が1.0%……。自動車メーカーを含めた国内の大企業製造業における管理職は5.1%(厚生労働省「令和4(2022)年賃金構造基本統計調査」における計算結果)だが、それよりも日本の自動車メーカーは、日産を除いて大幅に低いことがわかる。 それではトヨタのグローバルでの女性比率はどうだろうか。世界のトヨタ47社の状況を集計(コーポレートガバナンス2024年6月公表)したところ、グローバル平均での女性管理職は11%、経営幹部は7%だ。 その中で日本は管理職が3.7%、経営幹部が19%という結果が出ている。管理職3.7%はグローバルのトヨタ全体でもけた違いに低いことがわかる。 自動車業界に限らず、女性管理職、女性経営幹部の少なさが目立つ日本の産業界ではあるが、その根幹にある要因は1986年に施行された男女雇用機会均等法に関わるのではないか。均等法の施行によって性別にかかわらず「総合職」と「一般職」という2つのコースが設定された。幹部を狙えるのは総合職である。 しかし、「雇用機会均等」に関しては日本の経済界からは大きな反発があった。施行してしばらくは募集・採用、配置、昇進などにおける女性社員の扱いは男性と均等であることが「努力義務」とされるにとどまっていた。性別による差別は残ったままで、責任ある仕事に就く前に退職する女性も少なくなかった。
政治の世界も世界最下位レベル。
ところで、業界から少し視点をずらして日本の国会議員の女性比率はどれくらいだろうか? 世界経済フォーラムによる「Global Gender Gap Report 20238)」(世界男女格差報告書2023年版)では、「経済」/「政治」/「教育」/「健康」の4分野14項目のデータをもとに世界146ヵ国の男女格差の現状が指数化されている。 諸外国と比較すると日本は恐ろしく低い。総合順位は146ヵ国中125位! とくに、政治分野は138位と最下位クラスに位置している。日本の国会議員の女性割合は11%で、女性大臣は9.1%。これまで女性の首相が一人も存在しなかったことも低い評価となっている。 日本では1946年に初めての女性国会議員が誕生し、その時は衆議院議員466人中39人で全体の8.4%を占めていた。そして77年後の2023年10月24日現在、衆議院議員465人中女性議員は48人で9.68%である。77年経ってもわずか9人しか増えていない。自動車業界とは一概に比較できないものの、男尊女卑の意識が古くから根付いている状況は共通点が多いように感じる。 ではなぜ、日本の自動車業界には女性リーダー、女性管理職が少ないのか? それは、自動車業界は政治の世界同様、非常に保守的なバリバリの男性社会であることに大きく関係している。根本的な話だが、自動車関連産業に就職するほどクルマが好きで、将来は自動車企業のトップを目指してやる! という高い志を持った女性は実際、少ない。 筆者も業界35年の中でいろいろな女性にあってきたが、99%男性社会の中で苦労している。長きにわたってセクハラ、下ネタなんでもあり。女子どもの入るスキはない! それが当たり前の業界だったのである。