なぜ森保ジャパンの「攻撃的3バック」は「モダン」なのか? W杯アジア最終予選で問われる6年目の進化と結果
森保ジャパンは、無傷の4連勝で2次予選突破を決めた後のミャンマー戦とシリア戦で、2022年のFIFAワールドカップ・カタール大会以来となる3バックを採用。9月に控えるFIFAワールドカップ・アジア最終予選を前に、新たな戦いのオプションを示した。ウイングバックで出場した堂安律が「モダン」と言及した攻撃的な新3バックの狙いと、チームの進化を促すポイントとは? 主力選手たちの言葉から、6年目を迎える森保ジャパンの現在地をひも解く。 (文=藤江直人、写真=西村尚己/アフロスポーツ)
新3バックの鍵はウイングバックの人選「現代サッカーを象徴する形」
森保一監督は意図的に「攻撃的」と表現した。背番号10を託されて1年がたつ堂安律は「モダン」と言及した。いずれも日本代表が6月シリーズで採用した、3バックに対する形容詞となる。 敵地・ヤンゴンで6月6日に行われた、ミャンマー代表とのFIFAワールドカップ・アジア2次予選第5戦。そして、中4日の11日にエディオンピースウイング広島で行われたシリア代表との同最終戦を、いずれも[3-4-2-1]システムでスタートさせた日本はともに5-0のスコアで連勝した。 日本が試合開始から3バックで臨むのは、昨年3月に船出した第2次森保ジャパンで初めてだった。第1次政権を含めれば、4度目の挑戦でまたもやベスト16の壁を乗り越えられなかった、2022年12月のクロアチア代表とのFIFAワールドカップ・カタール大会のラウンド16以来となる。 もっとも、カタール大会のリベンジを期してきたドイツ代表を、4-1の快勝で返り討ちにした昨年9月の国際親善試合を含めて、途中で3バックに移行した試合は少なくない。初めて経験するわけではない日本の3バックを、なぜ堂安は「モダン」という言葉を添えて一線を画したのか。 答えはウイングバックの人選にあった。特にシリア戦では右利きの中村敬斗が左、そして左利きの堂安が右と、攻撃的でなおかつ逆足の選手がウイングバックとして先発している。 「それほどスピードがなく、サイドバックでもない選手たちがウイングバックでプレーして、ポジショニングやコンビネーションなどで両サイドを制圧する。間違いなく現代サッカーを象徴する形は見ている方々も楽しかったと思うし、実際にプレーしている僕たちもすごく楽しかった」 こう語る堂安には成功体験があった。所属するフライブルクで、昨シーズンはシャドーだけでなく右ウイングバックでもプレー。通算3シーズン目となるブンデスリーガ1部で、自己最多となる7ゴールをあげていた堂安は、6月シリーズを前に右ウイングバックでの出場を志願していた。 「フライブルクでは、ウイングバックが点を取る役割も託されていた。もしこのチームでも同じポジションを任されるのであれば、イコール、守備的な要員ではないと思っている」 言葉通りに堂安はシリア戦の19分にはリードを2点に広げる、節目の代表通算10ゴール目を決めている。自陣の左タッチライン際で中村が起点になり、中央でパスを受けたシャドーの久保建英が発動させたカウンターから、右側をフォローしてきた堂安が確実にゴールネットを揺らした。