なぜ森保ジャパンの「攻撃的3バック」は「モダン」なのか? W杯アジア最終予選で問われる6年目の進化と結果
厚みを増した最終ラインの選手層。「どのポジションにもいい選手たちがいる」
6月シリーズ後には、ミャンマー戦で3バックの左でフル出場した188cm84kgの伊藤洋輝が、シュツットガルトからブンデスリーガの名門バイエルン・ミュンヘンへ移籍した。町田もベルギーからのステップアップを望んでいる状況を、冨安はこんな言葉を介して歓迎する。 「間違いなく厚みが出てきていると思います。これまでの日本代表だと前線の選手たちにけっこうタレントが多いと見られがちでしたけど、いまではチーム全体的に(センターバックを含めた)どのポジションにもいい選手たちがいる。これは間違いなくいい状況ですよね」 個の力に長けているうえに、板倉はボランチでも、左利きの町田と伊藤は左サイドバックでもプレーできるし、さらに冨安はアーセナルで左をメインにサイドバックを主戦場としている。シリア戦の後半途中から、交代した遠藤に代わって左腕にキャプテンマークを巻いた冨安は言う。 「試合のなかで立ち位置が変われば、3バックが4バックのように見えるときもあるし、もちろんその逆もあるし、それは相手を見ながら変えていく必要がある。最終ラインがシンプルに3枚だけになるのであれば、一枚ディフェンスが少なくなる分、一人ひとりが守るスペースが増える、というのはあるかもしれないけど、3バックだからどうこう、というのは特にないですね」 所属クラブでの経験をもとに、3バックにも問題なく対応できる。冨安の言葉は守備陣の総意でもある。多士済々な顔ぶれがそろったからこそ、森保監督は6月シリーズに谷口彰悟と橋岡大樹も加えた6人のセンターバックを招集。対照的にサイドバックを専門とする選手は菅原由勢と長友佑都にとどめた。 招集した選手のポジションを見ても、特に最終予選進出の可能性を残し、全力で臨んでくるシリア戦では最終ラインを板倉と町田、そして冨安に一任。左右のウイングバックにアタッカーを起用する、まさに「攻撃的な3バック」で臨むと決めていた森保監督の意図が伝わってくる。 「後ろに置いた3枚だけでしっかりと守れるだけの自信があるという判断だと思うし、そこは他の選手たちも同じ考えだと思う。ただ、それは対アジアにとどまらず、これからもっと、もっと強いチームに勝っていくうえでも、そういう選択肢というものはもっておくべきだと思う。少しずつチャレンジしていけばいいと思うし、それができるだけの個々の能力はそろっているので」 2年後のFIFAワールドカップ・北中米大会を見据え、戦い方の幅を広げるオプションを導入する最大のチャンスが6月シリーズだと位置づけた遠藤に、久保も思考回路をシンクロさせている。 「アジア最終予選ではロングボールを蹴ってくるチームがあるかもしれないけど、僕たちが見ているのはその先の戦いなので。僕たちよりも強いチームがロングボールを蹴ってくる場面はほとんどないはずだし、その意味でも僕たちのほうこそロングボールを多用せずに、そのうえでしっかりとつなぐ戦い方を、どんな相手に対してもできるようにしなきゃいけない」