なぜ森保ジャパンの「攻撃的3バック」は「モダン」なのか? W杯アジア最終予選で問われる6年目の進化と結果
6年目の森保政権に加わった“刺激”。結果と進化の二兎を追う最終予選へ
アジア最終予選進出を決めた後のいわゆる消化試合として6月シリーズを迎え、ここにきてセンターバックの顔ぶれが特に充実してきた。4バックに戻したシリア戦の後半を除いて、森保監督がここにきて3バックを2試合、計135分にわたって試した理由はもう一つあると見ていい。 イラン代表に逆転負けを喫したアジアカップの準々決勝後は、相手の執拗なロングボール戦法に対して、3バックにスイッチして対抗すべきだったと批判を浴びた。4バックでスタートしたこの試合では、ベンチに谷口や町田を残したまま、交代枠を一つ残して終戦を迎えている。 攻撃的な3バックはFIFAワールドカップ・カタール大会のドイツ戦、そしてスペイン戦の後半から導入し、ともに逆転勝ちを収める原動力になった。しかし、事前に練習をほとんど積んでいない、いわゆるぶっつけ本番のスクランブル布陣だったと指揮官自身が明かしている。 何よりも第1次森保政権の船出から、まもなく6年を迎える状況がある。FIFAワールドカップで指揮を執った後も続投した、初めての代表監督となった指揮官の手腕を認めつつ、第1次政権でキャプテンを担い、第2次政権では代表から遠ざかっているDF吉田麻也はこう語っていた。 「もちろんメリット、デメリットはあると思う。長く指揮を執るなかで選手たちの力を把握しているし、ある程度作られた部分からチームをスタートできる点や、目指していくサッカーを選手たちが理解できていて、さらに何が求められているかを理解している点はメリットですが、長くやるほどマンネリ化や選手の固定化が懸念されるところはデメリットになりかねない。それらをいかに払拭して、チームのなかでポジティブな部分を出していけるかがカギを握ると思う」 王座奪回を達成できなかったアジアカップを境に、今年1月まで歴代最長の国際Aマッチ10連勝をマークした森保ジャパンがやや失速した感は否めない。だからこそ、左右のウイングバックにアタッカーを配置する、攻撃的な3バックで臨んだ6月シリーズのシリア戦は大きな刺激になる。 たとえば、シリア戦の3バックを「モダン」と呼んでいた堂安は、右ウイングバックに対して「さらに代表でキャリアを積み重ねていくうえで、ここがベストポジションになるかもしれない」とモチベーションを高めている。一方で冨安はマンネリ化などの心配は無用と強調している。 「新しいシステムへのトライはポジティブに感じるけど、僕を含めたすべての選手が日本代表に選ばれて、実際に代表チームへ合流するだけで、いつも特別な思いを抱いている」 9月からはアジア最終予選が開幕し、日本はオーストラリア、サウジアラビア、バーレーン、中国、インドネシア各代表とともにグループCに入っている。初戦は9月5日。相手は中国。場所は埼玉スタジアム。上位2位までが自動的にワールドカップの切符を獲得する、来年6月まで計10試合が組まれている戦いで、森保ジャパンは結果と進化の二兎を貪欲なまでに追い求めていく。 <了>
文=藤江直人