【金崎夢生の今|前編】所属先なしの35歳、8か月の空白期間に何を考えたか。ヴェルスパ大分加入の理由も明かす
4-2-3-1のセカンドトップ、膠着状態を打破する役割
いったん目標を定めたら、一心不乱に突き進んでいくのが彼らしいところ。最初に日本代表入りした名古屋を離れてニュルンベルクに赴いた時も、そこからポルトガル2部のポルティモネンセ入りした時も、キャリア絶頂期の鹿島を離れて鳥栖に行った時も、常に自らが歩むべき道を明確に定めていた。 「鹿島を離れた時は、『もう自分のやるべきことは全てやり切った』という気持ちでした。毎年、タイトルを狙い続けるのも意味あることですけど、僕は同じサイクルを繰り返すんじゃなくて、違うことをしたかった。その後、名古屋と大分に帰った時、琉球でも自分の役割を全うしようと必死に取り組んできたつもりです。 去年の琉球ではシーズン途中にボランチを志願しましたけど、それもチームを勝たせるために自分に何が最善かを考えてチャレンジしたこと。結局、監督も代わったりしてうまくいきませんでしたけど、ヴェルスパでは勝つために持てる力の全てを注げると思った。そのために再スタートを切ったんです」と金崎は目を輝かせる。 新天地2戦目となった9月16日のブリオベッカ浦安戦。背番号87をつける男は前回より少し早い64分から登場。4-2-3-1のセカンドトップの位置に入り、0-0の膠着状態を打破する攻撃的な仕事を担った。 ライン間のポジションを取りながら起点を作ろうとする彼になかなかパスが入らなかったが、ここ一番の抜け目のなさは健在。76分に自らボールを持ち、ドリブルで局面を打開して最初のシュートを放つと、迎えた85分、右クロスから打点の高いヘディングシュートをお見舞いする。 「これは決まった」と誰もが思う決定機だったが、惜しくも枠の外。山橋監督も「あれを決めてほしかった。得点力に期待しているので、次は決めてもらいたい」とエールを送っていた。 本人は試合勘の不足は感じておらず、スタメンでも行けると考えている。より長い時間プレーできれば、ゴールを脅かすチャンスも増えていくはず。本当のチャレンジはここからだ(後編に続く)。 取材・文●元川悦子(フリーライター)