トム・ヨーク、ソロの現在地。来日ツアーが控えるいま、Radiohead以外の音楽的探求を振り返る
トム・ヨークの来日公演『Thom Yorke: everything playing work solo from across his career』が11月に開催される。 【画像】トム・ヨーク 1990年代にデビューしたイギリスのバンドRadioheadのフロントマンとして広く知られるトム・ヨーク。彼はロックバンドのフロントマンという枠を超え、実験的で革新的な音楽を生み出し続ける存在として、世界の音楽業界に多大な影響を与え続けている。そうしたRadioheadとしての輝かしい達成はあまりにも有名だ。 一方で、Radiohead以外の活動に馴染みのないリスナーからすれば、2016年にリリースされたRadioheadの最後のスタジオアルバム『A Moon Shaped Pool』以降の活動を知らない人も少なくないかもしれない。ソロでの来日公演が迫ったいまこそ、トム・ヨークという音楽家の現在地と、彼を突き動かしてきた探究心を浮き彫りにしていきたい。彼のキャリアのターニングポイントや、現在に至るまでの変遷を振り返る。
『A Moon Shaped Pool』の余韻
Radioheadが2016年にリリースした『A Moon Shaped Pool』は、これまでバンドが築き上げてきた音楽スタイルの集大成であり、エレクトロニカ、クラシック、アンビエント、フォークなど、ロック以外のジャンルのさまざまな要素を融合させた作品だ。 「月の形をしたプール」。このアルバムカバーのイメージが指し示す通り、多くの楽曲は内面的な静けさを暗示している。ストリングス(弦楽器)をフィーチャーした“Burn the Witch”やアンビエント的なアプローチが光る“Daydreamimg”の冒頭2曲を筆頭に、極限まで楽曲が研ぎ澄まされており、達観した世界観が感じられるだろう。また『OK Computar』(1997年)期からライブで披露されていた“True Love Waits”が正式な音源として、当初とは大きく異なるアレンジで発表されたことでも話題になった。 Radioheadとしての最後の来日公演は、2016年の『SUMMER SONIC』でのヘッドライナーとしてのパフォーマンスだ。2017年にサウスアメリカでのツアーを終えてから、トム・ヨークはソロ、あるいは、劇伴、そしてThe Smileとしての活動にも注力していく。 Radioheadが長年のバンド活動をいったん区切り、トム・ヨークが個人の表現にシフトした背景には、新たなクリエイティブな挑戦を求める彼の探求心があった。