「日本は米中よりも信頼されている」 政治学者ギブール・ドラモットが指摘する、グローバルサウスと連携できる日本の強み
米国が自国第一主義に傾き、欧州は内部の結束を固めるのに苦労しているなか、欧米ともに「グローバルサウス」との連携に失敗し、ロシアや中国が影響力を強めている状態にある。しかし、フランス国立東洋言語文化学院日本学部教授(政治学)のギブール・ドラモットは、日本とオーストラリアなら西側陣営の一員としてグローバルサウスと緊密に連携することができると考える。 【画像】2023年のG7広島サミットには、「グローバルサウス」諸国が初めて招かれた 2008年に「日本の防衛政策の決定要因と政治ゲーム」で渋沢・クローデル賞本賞を受賞し、2023年には『日本──国際関係における控えめなリーダー』(未邦訳)を刊行した日本研究者であるドラモットに、仏紙「ル・モンド」が日本の役割を聞いた。
グローバルサウスと西側諸国の関係
──日豪の2ヵ国は、グローバルサウスをどんな風にとらえていますか。 まず、グローバルサウスの概念は曖昧です。サウスという単語が目に入るかもしれませんが、これは地理上の地域を示すわけではありません。 グローバルサウスとは、植民地支配を受けていた時代の社会や経済の構造がいまも残る国々を指します。どこも世界経済に統合されてはいますが、それぞれの国を見れば、政情不安の国々から新興国まで、じつに多種多様です。 そんな多種多様な国々に共通点があるとするなら、それは植民地支配を受けた記憶です。西洋諸国をお手本とすることに対する拒否感が強く、米国が同盟国とともに中露と対立するときは、そこに巻き込まれないように距離をとります。なお、中国もグローバルサウスの一員を自任する国です。 グローバルサウスのそうした中立の姿勢は、ロシア政府にとって都合よく働きました。ロシアに対する経済制裁の効果が弱まりましたからね。ただ、ロシアに制裁を科した西側諸国の戦略にも、思い上がりや見掛け倒しの部分がありました。西側諸国だけでは、世界のGDPの40%しか占めていません。 本気でロシアを経済制裁で屈服させるつもりだったのなら、非西側諸国に働きかけて、制裁の大義への賛同をとりつけるべきではなかったでしょうか。 グローバルサウスの盟主は中国とインドです。2023年9月、中国の国家副主席の韓正が国連総会で演説をしました。その演説で語られたのは、開発途上国の目標と課題の数々が、中国の目標と課題と似ており、「西洋の覇権」とは別の選択肢として中国があるという話でした。