「日本は米中よりも信頼されている」 政治学者ギブール・ドラモットが指摘する、グローバルサウスと連携できる日本の強み
強固に連携できるのは日本
西側陣営のなかでは、日本とオーストラリアが、グローバルサウスとの連携力が高いです。グローバルサウスとは、非同盟運動の国々の「新たな呼び名」といってもいいところがありますが、こうした国々は、日豪の2ヵ国を、ほかの西側諸国と一緒くたにしていません。 もちろん、日本もオーストラリアも、それぞれの地域で植民地支配をしていた重い過去はあります。しかし、日豪から植民地支配を受けなかった地域や、その度合いが小さかった地域もあるわけです。たとえばインド、サウジアラビア、ブラジルといった国々は、日本やオーストラリアとの間に歴史問題を抱えていません。 東南アジア諸国に関していえば、日本との間に歴史問題を抱える可能性はありますし、オーストラリアもパプアニューギニアなどに関して歴史問題を抱える可能性はあります。ただ、東南アジア諸国の場合、中国が覇権の野望を持って、それぞれの国の内政に影響を及ぼしているという現状があります。そのため、東南アジア諸国にとっては、日豪が中国に対してバランスをとれる勢力とみなされているのです。
信頼される日本
日本やオーストラリアのグローバルサウス観は、英仏米などの、かつての帝国主義勢力に比べると、上から目線ではないと受け止められています。英仏米は、いまも一種の帝国主義を継続していますからね。 オーストラリアは、南太平洋の国々から、「米国の手駒として動く国」、「経済大国」と見られないように注意を払う必要がありますが、南太平洋地域の機関にオーストラリアが加わること自体は、地理上の位置からして正当なことだと受け入れられています。 1930~40年代に日本の侵略を受けて激しい被害が出た東南アジアでは、1970年代初めに、「日本の新しい帝国主義」に反発する抗議活動が起きたこともありました。しかし、シンガポールのISEASユソフ・イシャク研究所が実施した世論調査によれば、いま日本は、米国や中国よりも、同盟国として信頼できるとのことです。(続く) 日本がグローバルサウスと連携しやすい理由は、歴史的事情のみならず、現在の外交姿勢にもある。後編では、欧米とは違う日本のビジョンを考察する。
Philippe Pons