第2回:メインフレームのモダナイゼーションをどう進めるのか
メインフレームシステムで解くべき課題 前述の調査でメインフレームを利用されている多くのお客さまから課題についてお聞きしていますが、大きくは以下の5つに集約されました。 レガシーアプリケーション アプリケーションの構造や利用している技術、環境によっては、業務で必要な機能を提供することが困難になっていること、業務要件の変更を素早く反映することが難しくなっていることがあります。開発環境を最新化(モダナイズ)することで解決することも多く、何が課題となっているかを深堀する必要がある領域になっています。 データの利用や活用 メインフレーム上のデータ利用や活用を阻害するものとして、多岐に渡るデータアクセス方式とメインフレーム固有のデータベース技術などがあります。ファイル転送を利用しサーバーで活用するケースも多くありますが、夜間バッチ時点のデータ鮮度になることや、短時間で処理する必要があるなど運用上の課題もありそうです。 ブラックボックス化 業務アプリケーションに加え、運用システムでも開発したシステムの仕様が継承されていないことがあります。定期的に変更が生じるシステムでは、プログラムの修正やテストの過程で結果的に技術の継承ができていることもありますが、共通プログラムや運用機能のように、修正の機会が少ないプログラム群はブラックボックス化してしまうことがあります。対応の一例として、ブラックボックス化したアプリケーション資産の棚卸しと、継承の方法(仕様分析、文書化、廃止など)について方向性を決めることが重要になります。また、将来的にはAI/生成AIにより、仕様の分析などができる可能性がありそうです。 ITインフラ・運用 今に始まったことではありませんが、システム開発コスト、運用コスト、インフラコストの増加が課題になっています。利用するハードウェア、ソフトウェア、技術を最新化することで避けられるものも多く存在します。昨今では自動化技術により、人手を掛けずに実施できる作業も多く、省力化よりも無人化がより効果的な解決策になっています。 技術者不足 以前より国内の技術者は常に不足しており、特にメインフレームについては、減少の傾向が強くなっています。コスト削減の一環で業務アプリケーションやインフラ保守要員を極限まで最適化しているケースにおいては、日常的なメンテナンス作業に追われ、モダナイゼーションを含めた新たな取り組みが難しくなっていることがあります。 このようにお客さまによって、課題ごとの深刻度や優先度も異なっているのが実情です。この課題を事前に明確にしておくことで、解決策の方向性を定め、効果を評価しやすくすることもできます。 メインフレームテクノロジーの進化 最新のメインフレームは、単なるアプリケーションやデータベースのサーバーではなく、最新の技術と融合して進化しています。特に生成AIが注目されており、回答者の86%がメインフレーム環境に生成AIツールとソリューションを導入、または導入を計画しています。これにより、メインフレームはハイブリッド戦略の一環として再活性化され、より柔軟で効率的なシステム運用が可能となっています。また、メインフレームとクラウドの統合が進んでおり、クラウドネイティブな環境での運用管理が実現されています。 さらに、メインフレームはAPI化され、クラウドからのAPIコールやデータ連携が容易になっています。これにより、メインフレームの資産を最大限に活用し、クラウドとのシームレスな統合が可能となっています。また、メインフレームの操作がセルフサービス化され、運用監視にAIが適用されることで、運用の効率化が図られています。 ビジネス価値の訴求 メインフレームは依然としてビジネスに不可欠な存在です。キンドリルが実施したメインフレームを利用するユーザー企業500社を対象とするアンケートによると、回答者の90%がメインフレームをビジネス運営にとって非常に重要と考えており、収益性が9~11%向上することが報告されています。特にセキュリティとレジリエンス(障害回復性)が強化されており、法規制順守の要請に対応するための投資が進んでいます。また、メインフレームのモダナイゼーションにより、データ駆動型のアプリケーション開発やAIの活用が進み、ビジネスの競争力が向上しています。 メインフレームのモダナイゼーションは、ビジネスの効率化とコスト削減にも寄与しています。例えば、メインフレームの最新技術やワークロードの最適化によって運用コストが削減され、パフォーマンスが向上しています。また、メインフレームのデータをクラウドと連携させることで、より迅速なデータ分析と意思決定が可能となり、ビジネスの俊敏性が向上しています。