第2回:メインフレームのモダナイゼーションをどう進めるのか
これからのメインフレームの深化 メインフレームは過去の遺物ではなく、未来に向けて進化し続けるプラットフォームです。多くの企業がハイブリッドIT戦略を採用し、メインフレームとクラウドの統合を進めています。スキル不足の問題も外部企業のサポートで解決されつつあり、メインフレームの運用管理がより効率的になっています。さらに、生成AIの導入により、メインフレームの運用が自動化され、より高度な分析と洞察が可能となっています。こうした背景から、メインフレームは今後も重要な役割を果たし続けることが期待されています。 メインフレームのモダナイゼーションには、以下の3つのアプローチがあります: 1.Modernize On メインフレームの最新技術やワークロードの最適化に焦点を当て、セキュアにAIの活用やワークロード、運用の最適化を実現します。 ここ数年で、メインフレーム上のアプリケーションとほかのプラットフォームアプリケーションの接続性が劇的に進化しました。従来はメインフレーム上の業務アプリケーションを分散系アプリケーションから利用するためには、MQシリーズなどのメッセージングアーキテクチャーを採用し、業務アプリケーションの要求と応答をメッセージにより中継する方法が広く採用されました。この方法の利点は古い、あるいは互換性のないインターフェースをメッセージに変更することで、メインフレーム上のアプリケーションに関する利用の制約を大幅に緩和することになりました。 一方で、新たなプラットフォームに対しては、メッセージングアーキテクチャーの導入と専用アプリケーションの開発が必要となり、一定の開発と期間が必要となっていました。これらの制約に対し、最新のメインフレームでは、APIによるプログラム相互連携が実現されており、ホスト上の「COBOL」プログラムからクラウド上のアプリケーションを相互に呼び出すようなことが容易に実現できるようになっています。 データの利用についてもデータアクセス仮想化技術により、さまざまなメインフレーム上のデータを、SQLを介してアクセスするようなことも実現できます。これにより複雑なアクセス方式の理解やユーティリティーの違いなどを考慮することなく、比較的初学者であってもSQLを通じてアプリケーションロジックを組み立てることが可能となっています。 2.Integrate With メインフレームとクラウドのテクノロジーやワークロードシフトに焦点を当て、メインフレームのアプリケーションやデータをクラウドと連携させます。 前述のModernize Onに加えて、メインフレームのデータを即時に伝送するChange Data Capture(CDC)技術によるデータの相互利用が可能となっています。従来はファイル転送など決まったフォーマットでの転送に依存していましたが、CDC技術の一部としてデータの加工や変換なども実装できることで、コード変換やマスキング、データ保護といった幾つかの重要な機能を一度に実現することも可能になっています。 また、メインフレームの環境をそのまま「Linux」上で動作させるような特別なソリューションもあり、メインフレーム上の負荷を軽減しつつ、開発環境の充実を図ることもできるようになっています。 3.Move Off レガシーアプリケーションやデータ資産の変換技術に焦点を当て、アプリケーションやデータをクラウドへ移行させます。 脱ホストには、脱ホストする業務アプリケーションの仕様をもとに、新たに開発を行う「リビルド」という方式と、機械的な変換を中心に行う「リホスト」方式があります。リホストには言語変換を伴うものと言語を維持するものがあり、対象システムの脱ホストの優先度と緊急度により使い分けることが重要となっています。 リビルド:業務アプリケーションやインフラに加えて運用についても新規に作り直すことを指しています。要件を反映しやすい反面、新規開発と同規模の費用、期間、技術者が必要であり、十分な検討と体制が必要です。 リホスト(言語変換):市場にはメインフレーム上のCOBOLを「Java」に変換するソリューションが多くあり、変換の精度も年々改善されています。データベースも変換の対象となっていますが、運用や互換性のない業務については、新たに設計・開発する必要があり、概念実証(PoC)などを通じて早期に確認することが重要です。 リホスト(言語継承):COBOLや「PLI」といったメインフレーム上の業務アプリケーションについて、そのまま移行するソリューションがあります。こちらもデータベースや関連する機能の一部を移行することが可能ですが、新規に設計・開発が必要な部分もあり、こちらもPoCなどを通じて早期に確認することが重要です。