第2回:メインフレームのモダナイゼーションをどう進めるのか
今回は、キンドリルが提唱する「Right workload at Right platform」(適材適所)を軸に据えたメインフレームモダナイゼーションにおけるロードマップの重要性と運用設計を含めたシステムポートフォリオを紹介します。 メインフレームに限らず、システムを新しく生まれ変わらせる試みは、コンピューターの歴史上幾度となく行われ、現在に至っています。その中で、特にメインフレームが注目を集めている理由はどこにあるでしょうか。 何となく昔のイメージのシステムがそのまま使用されている様子を思い浮かべているのではないかと思いますが、実際には、その企業で長年培われてきた情報技術(IT)の集大成となっており、究極のカスタムメイドのITシステムが完成されています。メインフレームを除く一般的なITシステムでも長期の互換性はあるものの、10年程度で技術的にリフレッシュすることが多く、実装された多くの業務プログラム資産についても、膨大な費用を掛けて再開発されることは珍しくありません。再開発される業務プログラムの中には、単純に実装方法を新しい技術に合わせるものもあれば、新たな技術を生かすためにアーキテクチャーから見直すようなケースもあります。 モダナイゼーションにさまざまな方式やソリューションがある中で、何を指針として進めれば良いのでしょうか。数年前からよく耳にする「脱ホスト」は、今後の主流なのでしょうか。多くの議論はありますが、今回は実際のメインフレームユーザーへの調査結果を踏まえ、メインフレームモダナイゼーションの将来展望について、3つの観点で詳しく説明します。 メインフレームユーザーの動向 キンドリルは、2023年度と2024年度に世界中のお客さまを対象として、メインフレームの利用や課題についての現状調査を行いました。その結果で筆者らが最も驚いたことは、脱メインフレームが加速するというよりも、「メインフレームの継続利用」「メインフレームとクラウドやサーバーとのハイブリッド構成」「脱メインフレーム」にそれぞれ同じ程度に分かれており、グローバルでも大きな偏りがなかったことです。 2024年度の調査結果では、「脱メインフレーム」の割合がやや減少して、25%になっています。これらが直ちに日本のメインフレームユーザーの傾向と一致するわけではありませんが、メインフレームとクラウド、分散系のそれぞれの良さを生かしながら進めていくIT戦略が主流となっており、後に述べるITシステムで解くべき課題の解決にフォーカスした進め方が良いと考えています。 また、メインフレームユーザーにおける最大の関心事の一つにAI/生成AIに関する取り組みがありました。2023年度の注目すべき動向がメインフレーム利用傾向だとすると、2024年度はメインフレームにおけるAI/生成AIの活用です。既に86%のメインフレームユーザーがAI/生成AIをメインフレームで利用することに着手あるいは計画していることが分かりました。メインフレームシステムのほかにはない最大の特徴は、非常に膨大で長期間に渡る企業占有データを保持しているということです。これは業界の中でその企業にしかない価値を生み出す源泉であり、AI/生成AIによりその活用方法が大きく広がったことを意味しています。 さらに、AI/生成AIによる業務アプリケーションプログラムの最適化や他プログラム言語への変換について今後の活用が期待されており、急速に進化する領域だと言えます。