メルカリとリクルートはタイミーの牙城を崩せない、これだけの理由
リクルートは「バイト」にこだわると失敗する?
「タウンワークスキマ(仮称)」は、本体への業績インパクトやシナジー効果の小ささから、期間を追うごとに、運営に力が入らなくなってくるのではないかと筆者は予想する。 リクルートHDにおける足元の連結事業セグメントのうち、同社の収益の柱はHRテクノロジーや人材派遣事業で、80%近くの売り上げをつくっている。 一方でリクルート版のタイミーは、同社のセグメント売り上げが最も小さいマッチング&ソリューションセグメントに属しており、そのセグメントでは新卒者や転職者向けマッチングサービスの貢献度が高い。 サービス名からも分かるように、リクルート版タイミーは「タウンワーク」という限られた媒体で作用しうる、短期アルバイトのマッチングサービスを提供するにとどまるのではないか。 また、上場を控えているタイミーの想定時価総額は最大約1360億円で、リクルートHDの時価総額は約14兆円だ。リクルートにとって、スポットワーク市場はいささか小さく映るのではないか。 リクルートが得意とする、ホワイトカラー人材にもスポットバイトの対象を広げれば、リクルートが抱えている転職希望者や主要求人企業とのシナジー効果も生まれてきそうだが、そう簡単な話ではない。ホワイトカラーの仕事には業務委託形態の方が適しており、バイトという働き方は合わないのだ。ホワイトカラーの仕事は、高度な専門知識やスキルを必要とする場合が多く、短期間のアルバイトではそのニーズに十分に応えられないことがしばしばある。 例えば、プログラミングやマーケティングといった専門性の高い業務は、長期的なプロジェクトや継続的な業務が求められることが多く、取り扱う情報の多くが機密情報となる。これを短期バイトで満たそうとすると管理コストや法務コストがいたずらに上がってしまう。 従って、リクルート版タイミーが対象とする市場は、本体の他事業とのシナジーが薄く、市場規模も小さいことから事業継続のモチベーションが低下するのではないかと考えられる。 飲食業界や小売業では、繁忙期やイベント時に短期間で働ける人材を求めるニーズが高まる。このような即時的な人手を必要とする分野では、リクルート版タイミーのようなサービスは大いに役立つが、ホワイトカラーの市場ではその需要は限定的なのだ。 以上のように、リクルート版タイミーがホワイトカラー市場で成功するためには、短期バイトの形式にこだわらず、業務委託やフリーランス契約といった柔軟な働き方をカバーすることも、一考の余地がありそうだ。