メルカリとリクルートはタイミーの牙城を崩せない、これだけの理由
「タイミーさん」の重要性
しかし、タイミーの牙城は簡単には揺るがないだろう。 同社が市場で高い評価を受ける一因は、タイミー経由で飲食店で働くスポットワーカーを「タイミーさん」と呼ぶ文化が根付きつつある点にある。 インターネットで情報を検索する行動を「ググる」と呼ぶことが定着したように、また、出前を「ウーバー」と呼ぶように、企業やサービスの名称が一般名詞を置き換えるほどの存在になると、そのビジネスを後発企業が追い抜くのは難しくなる。 これは「イノベーター理論」と「ネットワーク効果」の観点からも説明可能だ。 米国の社会学者、エベレット・M・ロジャース氏が提唱した「イノベーター理論」によると、新しい技術やアイデアは、初期の導入者(イノベーター)から始まり、その後、初期採用者、アーリーマジョリティー、レイトマジョリティー、そしてラガード(遅滞者)へと広がっていく。 タイミーが「タイミーさん」という新しい言葉や文化を作り出し、それが広く認知されると、そのブランド力とユーザーの忠誠心が強化される。これは、初期採用者やアーリーマジョリティーがそのサービスを継続的に利用する動機となり、後発企業が同様のサービスを提供しても、既存のユーザーを奪うのが難しくなる参入障壁として機能する。 ネットワーク効果とは、ある製品やサービスの価値が、利用者の数が増えることによって増大する現象をいう。 多くの求職者がタイミーを利用するようになると、それに対応するために多くの企業がタイミーを通じて人材を募集するようになる。この結果、タイミーのプラットフォームはさらに多くの求人情報を提供でき、求職者にとっての利便性が向上する。このようなネットワーク効果により、タイミーの市場ポジションはますます強固なものとなり、後発企業がそのシェアを奪うのは一層困難になるのだ。 このように、アルバイトの現場で「タイミーさん」という言葉が普及すると、そのブランドは単なるサービス提供者以上の意味を持つようになる。これは、タイミーが単なる労働力のマッチングプラットフォーム以上の存在として認識され、利用者にとっては生活の一部やコミュニティーの一員として感じられるようになるということだ。こうした文化的資産は、後発企業が簡単には模倣できない独自の強みとなるだろう。 ではここからは、メルカリやリクルートと比較したタイミーの優位性を見ていきたい。