クルマの運転中、歩行者が「お先にどうぞ!」 これ行ってもOK? 実は「行ったら歩行者妨害」で“検挙”の可能性! なぜ「譲られ検挙」起きるのか 法律はどうなっている?
歩行者の「親切心」と「法律」 どちらが大切?
クルマで横断歩道や交差点などを通過するとき、渡ろうとしている人に「お先にどうぞ」と道を譲られることがあります。 この場合、歩行者の親切心にあずかって進んでもいいのでしょうか。 【画像】「ええぇぇ…!」 これが道路の「ひし形マーク」の正体です!(21枚)
まず道路交通法第38条では、「横断歩道または自転車横断帯に接近する時には、横断しようとする歩行者または自転車がいないことが明らかな場合を除いて、横断歩道等の直前で停止できるような速度で進行しなければならない」と定められています。 もし横断しようとする歩行者がいた場合は、横断歩道等の直前で一時停止し、その通行を妨げないようにしなければなりません。 また、信号のない横断歩道を通過する時は、急に歩行者が出てきても止まれるように、アクセルを緩めたりブレーキを踏んだりして減速することが必要です。 もちろん、歩行者が渡ろうとしているのに強引に通行した場合は言語道断で、非常に危険です。 横断する歩行者を妨害した場合は「横断歩行者妨害違反」として、違反点数2点と反則金9000円(普通車の場合)が科されることがあります。 では、横断歩道を渡ろうとしている歩行者からジェスチャーなどで「先に行っていいよ」と合図された場合はどうでしょうか。 ドライバーの中には、歩行者とのコミュニケーションが成立したと判断し、先に行かせてもらった経験がある人もいるかもしれませんが、この場合は違反にならないのでしょうか。 法令で定められているのは、「歩行者がいる場合には横断歩道の直前で一時停止すること」と「歩行者の通行を妨げないこと」の2点です。 そのため、「歩行者が譲ってくれたかどうか」というのは一切関係がなく、横断歩道の直前で一時停止しなかった場合には、れっきとした違反になってしまいます。 もちろんドライバー側の気持ちとしては、横断歩道の直前で一時停止した上で、歩行者からの合図を受けて先に通行したじゃないか、歩行者の通行を妨害したとは言えないだろう、という考えになるかもしれません。 実際には、歩行者の合図を確認して通行した場合でも、横断歩行者妨害違反として検挙されたという事例が多数報告されているため、まずは歩行者に合図し先に横断してもらうか、横断の意思がないことを確認するほうがいいでしょう。 また、譲る合図をしたのが歩行者1人だけとは限らず、反対方向から横断しようとする歩行者がやってくる可能性もあるため、一方だけではなく周囲をよく確認することも大切です。 ※ ※ ※ 近年は横断歩道での歩行者妨害が話題に上がることも多く、警察でも取締りが強化されています。 SNSなどでも、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているのにクルマが停止しない映像などがよく話題に上がります。 警視庁によると、令和元年(2020年)から令和5年(2023年)までの5年間に、自動車と歩行者が衝突した交通死亡事故4435件のうち、約7割にあたる1993件は歩行者が横断中の事故でした。 クルマ対歩行者の事故では、歩行者側は大きなケガや障害につながることも十分にあるので、交差点や横断歩道を通行する際は特に注意が必要です。 横断歩道での歩行者の優先は法令で定められたルールですので、歩行者がいる場合は必ず一時停止し、歩行者の横断後に周囲の状況を確認して通行しましょう。
くるまのニュースライター 市川ミナミ