様々なアートに出会う旅 「森の芸術祭 晴れの国・岡山」をめぐる【2】 津山市(前編)
岡山県北部では11月24日(日)まで、国際芸術祭「森の芸術祭 晴れの国・岡山」が開催されています。このたび、アート作品の鑑賞を軸に、奈義町と津山市を訪れ、観光やグルメを満喫した旅のレポートをお届けします。今回は津山市(前編)です。 【写真】これもアート! ベンチに突然、鶴亀算の問題が… 国際芸術祭の開催エリアは、岡山県北部の12市町村。津山市、高梁市、新見市、真庭市、美作市、新庄村、鏡野町、勝央町、奈義町、西粟倉村、久米南町、美咲町と、広範囲にあたります。 そのうち、津山市の津山城周辺エリアとグリーンヒルズ津山エリア、新見市の満奇洞・井倉洞エリア、真庭市の蒜山エリア、鏡野町の奥津エリア、そして奈義町の奈義町現代美術館周辺エリアの5つの市町で、アート作品が展示されています。 津山市でまず訪れたのは、衆楽園(旧津山藩別邸庭園)。四季折々の自然美が楽しめる大名庭園で、現在は無料で一般開放されています。 ここでは、アーティストの太田三郎さんにお話しを聞くことができました。 太田さんは、美術大学などで教育を受けたわけではなく、好きなように作品を作っているそうで、ご本人は「部外者がアートの世界に乱入してきた」感じと話します。 同園を歩いていると、植物に名札がついています。それはよくある光景ですが、ここでは自発的に生えている植物(いわゆる雑草)にも名札がついています。これは太田さんが、庭園を植物園に見立てて設置されているそうです。 これまでにも、植物の種を使った作品などを発表している太田さん。そんな自然への強い思いを感じさせるアーティストの作品は他にもありました。 歩いているとベンチに突然、鶴亀算の問題が貼り付けてあります。太田さんは、鶴と亀の使用済み切手をたくさん持っていて、これをアートにできないかと作品を作ったそうですが、それだけでは面白くないということで鶴亀算を思いついたそうです。切手を使った作品を見るとヒントになるという、数学と美術がコラボした仕掛けでした。 そして、園内の建物の中には、動きがあまりない動画が流れています。これも太田さんの作品です。 あるお宅の庭を1年間撮影したものだそうです。あるときに、柿とみかんの木が隣り合わせに立っていて、仲のいい友だちのように感じたそう。本来なら同じ場所に育つのはあまりない組み合わせが、人が介在することによって生まれた光景だといいます。 例えば秋に柿がたくさんの実をつけていたかと思えば、次には1つになっているのを見て、「今年もたくさんありがとう、来年もよろしく」という思いと、冬へ向けての「動物たちへの贈り物」でもあると話す太田さん。そこには優しさがあることも教えてもらいました。気がつかないだけでその庭の中にはいろいろなドラマがあり、それをアートに閉じ込めたという作品でした。 一方、衆楽園の迎賓館には、大きな暖簾(のれん)も展示されています。これは、リクリット・ティラヴァニさんと、真庭市の染色家・加納容子さんとのコラボ作品。時代劇で見るような大きな部屋に大きな暖簾が不思議な空間を創り出していました。 次に向かったのは、津山城の入口にある「つやま自然のふしぎ館」。ここは、1963年に開館したレトロ感もある博物館で、世界各地の動物のはく製が多数展示されています。実際の動物のはく製の大きさと、その数に圧倒されます。 そして、ここにも「森の芸術祭 晴れの国・岡山」の作品が展示されています。ソフィア・クレスポさんの作品で、AIが生成した絶滅危惧種に関する映像作品です。 とてもふしぎな作品で、この曖昧さが近未来を予測しているということでしょうか。同館の館長は、「この森の芸術祭の作品は映像で動いていますが、ここの常設展示は動きません。すごく対照的です」と話していました。 「森の芸術祭 晴れの国・岡山」の作品が展示されている場所にも、意味があるように感じました。 津山市にはまだまだ「森の芸術祭 晴れの国・岡山」の作品があります。 【3】へ続く
ラジオ関西