寒い地方と暑い地方、幸せに暮らせるのはどっち? 心理学者が解説
地球上のどこにでも住めるとしたら、多くの人が南国の楽園を選ぶかもしれない。太陽の光がさんさんと降り注ぐ、どこまでも続く海岸──。そんな休暇を思い起こさせる気候での生活は夢のようだ。だが、身の引き締まるような寒い冬の方が気持ちよく過ごせるという人もいるだろう。結局、どれが一番自分の心にしっくりくるか、ということだ。 温暖な気候が精神衛生を向上させるという考えは真実だ。日光は自然が与えてくれる精神安定剤だからだ。2015年に米医学誌「うつ病の研究と治療」に掲載された論文では、前向きな気分を促す脳内伝達物質セロトニンの生成には、日光に当たることが重要だと強調された。日当たりの良い地域で季節性感情障害(SAD)を訴える患者が少ない傾向にあるのは偶然ではない。この種のうつ病は、冬季に日照時間が短くなることが原因で発症するからだ。 日光による直接的な恩恵に加え、温暖な気候では屋外に出ることが多くなるため、活動的で健康的な生活を送ることができる。運動が不安やうつの症状を軽減することはよく知られているが、定期的な運動に取り組む機会は日照時間が長いほど増える。 こうした情報から、温暖な気候の地域で暮らせば必然的に幸せになれると判断するのも当然だろう。しかし、寒冷地での生活には意外な利点もある。寒い気候の長所としては、主に以下の2つが挙げられる。 ■1. 寒さは生産性を高める 温暖な地域に住む人々は社交的で、余暇を重視することが多い。のんびりとした晴れた日の午後に、やる気が出ないと感じたことがある人なら、その理由がわかるだろう。このような環境では、一貫した目標を計画的に達成しようとしている人は満たされない気持ちになるかもしれない。 温暖な地域の方が、冬季の日照不足によるSADの発症の割合が低いのは事実だが、寒冷な地域に住む人の方が生産性が高いという傾向もある。昨年4月に発表された労働経済学の研究では、人間が気温の高い環境で仕事をすると不快感やいら立ちを感じやすくなり、労働に支障をきたす場合が多くなると指摘された。