「痛くない親知らず」をそのまま放置するとどうなるか…「今すぐ抜いたほうがいい親知らず」の判断基準
■「痛みがある」以外の抜歯理由 親知らずの抜歯は、レントゲンやCTなどの精密検査を経て、角度や露出状況などの難易度によって近くのクリニックで行うか、大学病院などで抜歯するかを判断します。 麻酔をして、歯槽骨から歯を脱臼させます。難しい場合には歯を分割などして取り出します。その後、傷をきれいにして縫って終了です。傷が治った頃に抜糸を行い、歯が抜けた後は新しい骨が形成されて埋まっていきます。 抜くかどうかは、メリットが大きいのかデメリットが大きいのかのバランスで決められます。 抜くほうが良いと判断される理由としては、すでに悪影響を及ぼしているような場合が挙げられます。例えば、のどやあごの痛みがある、親知らずが感染や歯周病の原因になっている、親知らずが虫歯になっている、噛み合わせに悪影響を及ぼしているケースなどです。 ■残した親知らずが将来、活躍することも また、将来的に悪影響を及ぼしそうなことが想像できる場合にも抜くメリットになり得ます。例えば、親知らずが原因で歯が非常に磨きづらいケースなどです。先ほども説明したように、周りの歯が虫歯になったり、口臭の原因になってしまいます。 歯科矯正を始める前に、奥歯を後ろに動かすにあたってスペースが作れそうかなども考慮に入れる場合があります。 一方で、上下の噛み合わせがしっかりできている、または完全に骨に埋まって出てこない親知らずは、特にデメリットがないため抜く必要はないでしょう。 そういった親知らずは、将来的に他の歯が悪くなった場合の移植するための歯や、入れ歯やブリッジを支える歯として利用できる可能性もあります。 とはいえ、そういった判断は素人には難しいので、必ずかかりつけの歯科医に相談するようにしましょう。
■若者より高齢者のほうが抜歯のダメージ大 抜歯は年齢が上がるにつれ骨の密度が低下し、骨が硬くなるため、抜歯自体が難しくなり、治療の負担が増します。このため、若い世代よりも抜歯後の腫れや痛みが長引きやすく、回復にも時間がかかることが一般的です。 また、持病を抱えている方も多くなるため、手術に伴う麻酔や出血のリスクが増す点も注意が必要です。特に高血圧、糖尿病、心疾患などがあると、血圧の変動や感染症のリスクが高まり、麻酔の使用にも慎重さが求められます。術後に出血が止まりにくかったり、傷の治癒が遅れる可能性も高くなります。 さらに、親知らずが周囲の歯や歯茎に問題を起こしていない場合、無理に抜くことで健康な組織や歯に悪影響を及ぼすリスクもあります。例えば、抜歯時に周囲の骨や歯茎が損傷し、後遺症として痛みやしびれが残るケースもあるため、抜歯が必要か慎重に判断することが重要です。 ■自分で判断せず、専門家に相談を 加えて、免疫力が若年層に比べ低下しているため、術後の感染症リスクが高まることもあります。こうした身体的な変化を考慮し、医師と十分に相談してから判断することが必要です。 親知らずの存在は、見えないところであなたの健康を脅かす可能性があります。放置してしまうことで、将来的に大きな問題を引き起こすことも考えられます。親知らずの管理を怠らず、定期的な歯科検診を受けることで、自分の口腔内の健康を維持しましょう。 最後に、疑問や不安がある場合は、早めに歯科医に相談し、適切な治療を受けることが重要です。親知らずのリスクを理解し、健やかな口腔環境を保つための意識を持ち続けることが、より良い生活につながります。 ---------- 各務 康貴(かくむ・やすたか) 医師 大分大学医学部を卒業し、医師として救急医療や在宅医療に携わる。医療現場で予防の重要性や予防に取り組んでもらうことの難しさを痛感し、予防を予防として実践してもらうのではなく、切り口をずらして結果予防につながっているという世界観を目指す。マウスピース歯科矯正hanaravi(ハナラビ)を提供する株式会社DRIPSを創業。歯科と医科を繋げるリリモアクリニック内科歯科の院長を務めながら、新聞やテレビ、WEBメディアなどで予防医療について情報を発信している。 ----------
医師 各務 康貴