「移民を排除する」トランプと、彼を支持した「MAGA」主義者の正体…崩れゆく「アメリカの前提」とこれからの30年間に「世界で起きること」
アメリカ人とは「誰」なのか?
とくにヒスパニックのブルーワーカーは、内心で移民に反感を持っているのですが、その本音をトランプが言ってくれる。だから、つい支持をしてしまうという構造があります。 一方で、資産があり、教養があり、社会的地位のある高級住宅地に住んでいるタイプの人びとは、移民に来てもらったほうがいいわけです。賃金が安くなり、ビジネスもやりやすくなる。こうした層は民主党の支持者に多い。 ですから、トランプの共和党は「移民を排斥したい移民」、つまりは、自分がアメリカ人なのかそうでないのかはっきりしない人びとの琴線に触れているわけです。したがって、トランプが象徴しているのは、「誰がアメリカ人なのか」という問題なのです。 ――なるほど、でも、もともとはみんな移民ですよね。 その通りです。だから、アメリカにとって移民をストップするというのはおかしな話なのです。でもこの問題をめぐって、先に来た人と後から来た人、お金がある人とない人、学歴がある人とない人など、さまざまな分断が起こってしまう。 それを調整するのが政治の役割のはずですが、実際にはとても難しい。経営者もいれば労働組合もある。大企業がある一方でスモールビジネスもある。農業も商業もある。彼らが共生をするということは本来、難しいことなのです。 民主党は、「多様性はいいことだ」「どんな人でもみんな人間でアメリカ人です」と言う。「だから受け入れましょう」。でも、それにはお金がかかる。「社会保障を充実しましょう」「だれ一人取り残さない政治をやりましょう」と言っている。やっぱりお金はかかる。負担するのは先に来た移民たち勤労世帯。とくに中産階級です。 これが嫌だと思う人びとの気持ちを掴もうと、トランプはこう言います。 「アメリカ人はアメリカ人だ」「LGBTQは何がなんだかわからない。どっちかはっきりしろ」と。「アンドキュメンテッド・イミグラント(不法移民)」のようなワケの分からない移民は、「入ってこないように壁を作ろう」、そして「誰がアメリカ人かをはっきりしよう」と。 共和党の保守本流の人びとは、こんなことを始めると大変なことになるのは分かっているのですが、学級崩壊の際にはそんな良識はかき消されてしまうのです。