扶養に入るために働き方を抑えるのは得策ではない? 社会保険の適用拡大で、手取りはどれくらい変わるか
扶養内・扶養外の選択で変わる働き方と総収入
同じ年収115万円でも、扶養を外れて社会保険に加入すると手取りが15万円減少し、扶養内の年収105万円に抑えて働いたとしても、元々扶養を外れる前にあった手取りよりも9万円減少することになるとお伝えしました。 以下のグラフは、Aさんが35~59歳の定年まで働いた時の手取りと65~90歳まで支給される年金の総額を示したものです(年金の計算をする際、34歳までは厚生年金ではなく国民年金を支払っていたと仮定します)。 年収115万円で扶養から外れると、扶養内の時と比べて手取りは少なくなりますが、厚生年金の上乗せがあるため総収入は扶養を外れた方が上回る形になります。ただし、これは将来を見据えた結果であるため、Aさんの家計で年収115万円の扶養内で働いていた時と同じ手取りが必要な場合は、年収134万円で働かないと同じくらいの手取りにはなりません。(表1参照) では、年収115万円と年収134万円の働き方にはどのような差があるのかを確認してみましょう。Aさんが平日5日、東京都の最低賃金1163円でパート勤務していたとすると、年収115万円の場合の1日の勤務時間は4.1時間です。同じ勤務条件で年収134万円で働くとなると、勤務時間は4.8時間になります。1日0.7時間働く時間を増やすことができるのであれば、扶養内で働いていた時と同じ手取りで、かつ将来の年金や医療保障が充実した環境で安心して働くことができます。 もし、働く時間をこれ以上増やすことができないのであれば、時給が高い仕事に変える方法もあるでしょう。同じ平日5日で4.1時間勤務する場合、時給が1362円だと年収134万円になります。このように、同じ年収であっても働く時間や時給の条件を変えることで働き方を各家庭の状況に合わせて調整することが可能です。
扶養に縛られすぎず各家庭にあった最適な働き方を見つけよう
社会保険の扶養内で働く方が、負担が少なく一見お得に思えることは確かです。しかし、「扶養内で働く」という選択が必ずしも最適であるとは限りません。扶養を外れて社会保険料の支払いが増えたとしても、厚生年金に加入することで将来の年金額が増える点や怪我や病気・出産で働けなくなった時の保障が充実するなど、長期的な視点で得られるメリットもあります。 また、扶養内で働くとなると必然的に「働ける時間の上限」が決まります。そうなると、会社側も責任のある仕事を任せにくくなるためキャリアアップの機会を逃す可能性も高くなります。手取りの増減という目に見える変化だけでなく、今後の自分自身のキャリアを考えたときに「どんな働き方をしていたいのか?」も踏まえて、扶養内で働くか扶養外で働くかを選ぶことが大切です。 今回のように具体的に計算してみると、自分ごととして考えやすいのではないでしょうか。社会保険の適用範囲の拡大という外的要因で、扶養を外れてしまった方は、是非この機会に「扶養内で働く」という考えを一旦手放して、自分のキャリアや家計の未来を考えてみましょう。 扶養という制度に囚われすぎず、“うまく活用できるならする”位に捉えておいた方が、今回の様な制度拡大時にも慌てずに済みそうですね。 【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)
栗山美希(ファイナンシャルプランナー/ウェルビーイングマネーコーチ™)