伊豆諸島航路で唯一の「フェリー」に乗る マイカーそのまま運べます! 中身は大型客船並み!?
伊豆諸島唯一のフェリー
伊豆諸島に立ち寄る旅客船舶で唯一の“フェリー”が、神新汽船が運航する「フェリーあぜりあ」です。フェリーは乗客と車両を運搬でき、マイカーでそのまま乗船が可能です。 【写真】他社の特等室並み! これが「あぜりあ」一等室です 伊豆諸島へはほかに、東京などから東海汽船の中型貨客船が就航しており、例えば「さるびあ丸」は総トン数6099tもありますが、港からクルマを走行させて船内に収納できません。 一方「フェリーあぜりあ」は、総トン数495t、全長63m、全幅12.6m、航海速力15.2ノット(約28.1km/h)と小型の船体ながらフェリーです。遠洋マグロ漁船と同じくらいのトン数ですが、乗用車10台の搭載能力を持ちます。 この船は伊豆半島の下田港から、神津島、式根島、新島、利島(火・金・日曜日は順番が逆。水曜日運休)を巡り、下田港に戻ります。所要7時間と長時間航海するため、小型船ながら設備も充実。その特色を見ていきましょう。 「フェリーあぜりあ」が下田港を出港するのは午前9時30分です。筆者(安藤昌季:乗りものライター)はクルマの積み込みを見るために、8時10分に下田港の神新汽船のりばに到着しました。昔の国鉄の駅のような風情ある建物で、電話で予約したきっぷを対面式の窓口で購入します。 船は港に横付けされていました。前甲板のクレーンと、左舷船尾にそびえ立つショアランプウェイは迫力があります。ショアランプウェイとは、船と港の岸壁とのあいだに展開する架橋型出入口のことです。筆者が眺めていると、ショアランプ部分が可動し、港と船内とを結ぶ道となりました。乗用車と軽トラックが走行して船内の車両搭載区画に入っていきます。 クルマの積み込みと並行して、前甲板からはクレーンでのコンテナ積み込みも行われます。離島では特に悪天候時、船が着岸できないと生活物資が不足することもあるため、重要な作業です。
小さいけど充実した設備
「フェリーあぜりあ」の船体は三層構造で、上から航海船橋甲板、上甲板、第二甲板です。航海船橋甲板には操舵室、乗組員区画、旅客区画(一等室・特二等室)、上甲板は旅客区画(二等室)、第二甲板には車両搭載区画が配置されています。上甲板に旅客用の可動橋が設置されたので乗船しました。 吹きさらし部分に海へ向けられたベンチシートが設置され、船内に入ったところで右側に男女別のトイレ、左側に車椅子に対応した二等室があります。この区画はボックス席で大型テーブルもありました。 進むとエントランスです。乗組員がいるカウンターの脇には、飲料とカップ麺の自販機、冷水器、モニター、ごみ箱、車椅子トイレがあります。扉で仕切られた別区画が二等室です。絨毯の敷かれた区画で、寝転んで時間を過ごせます。モニターもあります。 エントランスから階段を上がると、航海船橋甲板。二等室の乗客が立ち入らないように案内がなされ、階段もロープで仕切られています。 ここの一等室は1室のみ。ベッドが2つと応接スペース、コンセント、冷蔵庫、モニター、ハンガーが入っているクロークがあります。シャワー・トイレ区画、プライベートデッキも備わります。シャンプーや石鹸などはありませんが、タオル3枚とバスタオル、ハンドソープが設置されています。トレイはウォシュレット付きです。総トン数は小さくとも、同じ島々を巡る「さるびあ丸」の特等個室と比較しても遜色ない設備が面白いです。 特二等は二等と同じカーペット敷き開放区画で、モニターがある点も同じですが、こちらは枕とクッション、マットレス、毛布が備わっています。枕は分厚く、マットレスはやや硬めですが、仮眠を取るのには十分な快適さ。一等より最大で2680円安く、二等より2670円高い設備ですが、一等室が充実しているので、正直なところ格差を感じました。