日本おわりっしょ…難関私大卒も〈月収19万円・貯金50万円〉の27歳女性「ワーホリ」でオーストラリアへ→“給与3倍で大喜び”から一転、“泣きながら後悔”のワケ【FPが解説】
Tさんの心が折れた“予想外”の悲劇
軽い気持ちで渡航を決めたTさんですが、Kさんとともに見た動画サイトで特集されていたのは、ワーホリの“光”の部分。実際にワーホリを利用した人のなかには、100社以上受けても一切受からず、履歴書を片手に職を探しさまようケースも少なくないといいます。 Tさんも、スムーズに仕事が決まらない日々にやきもきしていました。そんななか、苦労の末にとあるレストランが雇ってくれることに。月々の給与は3倍に増え、「こんなにもらえるんだ!」と大喜びのTさんです。 ただし、オーストラリアは物価高。収入は増えたものの、日本にいたころとは違い生活費もかかり、貯蓄に回す余裕はありませんでした。 そんなある日、Tさんは思わぬアクシデントに見舞われます。 休暇中にアクティビティを楽しんでいたところ、ビーチの岩につまずき転倒。病院に運ばれた結果、Tさんは足の指の骨が折れており、全治3週間と診断されたのです。 それまで大きなケガや病気にかかったことがなく、「渡航先で病院に行く機会もほとんどないだろう」と保険に最低限の保障しかつけていなかったTさんは、高額な医療費がほぼ全額自己負担に。さらに、治療のため仕事は休まざるをえませんでした。 「もしかしたら解雇されちゃうかも……」「こんなことになるなら、もっと考えておくべきだった」「親に会いたい、友達に会いたい。早く帰りたい……」Tさんは、経済的にも精神的にも追い込まれていきました。号泣するTさんの頭によぎるのは後悔の念ばかりです。
Tさんが想像していなかった「ワーホリ」の“落とし穴”
先述したように、出稼ぎ目的のワーホリ利用者は、SNSなどでも話題になるほど増加の一途をたどっていますが、気軽に行くには注意が必要です。今回、オーストラリアのワーホリ利用でTさんの周囲に起こっていた問題点として挙げられるのは、主に次の2点です。 1.想像以上の物価高 オーストラリアは近年、最低賃金の大幅引き上げによる人件費の増加、ウクライナ戦争に起因する原油・天然ガスの高騰、コロナ禍などを背景にインフレ傾向にあります。特に2022年は大きくインフレが進行し、約6.6%ものインフレ率を記録しました。 こうしたインフレから物価が上がっているほか、「豪ドル高・円安」も物価高の原因のひとつとなっています。 2020年には1豪ドルあたり約73円の為替レートでしたが、2024年6月現在では1豪ドルあたり約96円まで豪ドル高が進行。日本円に直して考えると、2020年には100豪ドルのものを買うのに7,300円で足りたところが、2024年には9,600円必要になったというわけです。 2.高額な医療費 オーストラリアは日本と変わらないほど最先端の医療や衛生環境が整ってはいるものの、医療費自体は日本の数倍かかります。 また、オーストラリアは日本の国民皆保険制度と同じような「メディケア」という公的医療保険制度を採用していますが、対象者は「永住権」を保持しているオーストラリア国民です。つまり、ワーホリで渡航する場合は対象外となります。 ワーホリの際、オーストラリアでの医療費は全額自己負担になるため、万が一に備えて「海外旅行保険への加入を検討する必要があるでしょう。 ワーホリについて調べると、かかる費用や注意点などの欄に必ずといっていいほど記載されているのが「海外留学保険」で、滞在1年あたり平均20~30万円ほどの費用がかかります。 しかし、できるだけ費用を抑えたいと考えたTさんは、最小限の保障しかおさえていませんでした。そうなると、今回のようにケガや病気などで保障金額が足りていなければ、不足分を自分自身で払う必要があります。 こうした事態を防ぐためにも、日本との医療保険制度の違いや実費を事前に把握し、必ず「保障金額が十分か」を確認してから保険に加入するようにしましょう。
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