2025年AIに関する予測 1:トランプとマスクが対立、AI業界に深刻な影響が
トランプ政権はAI規制に対して積極的なアプローチを取らなくなる可能性が高い
■3. トランプとマスクが対立し、AIの世界に深刻な影響を与える 米国で新しい政権が発足すれば、AIに関する政策や戦略も大きく変化する。トランプ大統領のもとでAIの潮流がどう変わるかを予測するうえでは、AI界で重要な役割を担っているイーロン・マスクとトランプの親密な関係に注目したくなるかもしれない。 たとえば、マスクがOpenAIを敵視していることを考えると、新政権は産業界との協力やAI規制、政府調達などにおいてOpenAIに対して非友好的なスタンスを取る可能性がある(これはOpenAI自身が懸念している現実的なリスクである)。反対に、トランプ政権がマスクの企業に便宜を図るかたちで支援する可能性も考えられる。たとえば、xAIがデータセンターを建設して最先端モデル開発競争で優位に立てるよう規制を緩和したり、テスラのロボタクシーにすばやく承認を与えたりすることなどだ。 さらに根本的な点として、イーロン・マスクはトランプに近い他のテクノロジーリーダーとは違い、AIの存在論的リスクを非常に重く見ている。彼はAI規制の大幅強化を支持する立場をとっており、カリフォルニア州のSB 1047法案(AI開発を大きく制限しようとする議論を呼ぶ法案)にも賛同していた。したがって、マスクが政権に与える影響は、AI規制の強化へとつながる可能性がある。 しかし、こうした推測には1つ大きな問題がある。ドナルド・トランプとイーロン・マスクの「蜜月」は、必ず破綻するだろうという点だ。 第1次トランプ政権で何度も見られたように、どんなに忠実に見える同盟者でも在任期間は驚くほど短かった。ジェフ・セッションズ、レックス・ティラーソン、ジェームズ・マティス、ジョン・ボルトン、スティーブ・バノンなどが代表例だ(アンソニー・スカラムーチの「在任10日」も忘れがたい)。第1次政権時代の高官や顧問で、現在も忠誠を保つ人物はほとんどいない。 トランプとマスクはいずれも複雑で気まぐれ、予測不能な性格であり、いっしょにに働くのは難しく、人間関係を消耗させるタイプだ。2人の関係は今のところ互いに有益だが、それはまだハネムーン期にすぎない。2025年が終わる前に、この関係は確実に悪化すると予想される。 では、それがAIの世界にどう影響するか。 OpenAIにとっては好ましいニュースだろう。テスラの株主にとっては好ましくないだろう。そして、AIの安全性を重視する人々にとっては残念な展開だ。トランプ政権はAI規制に対して積極的なアプローチを取らなくなる可能性が高いからである。
Rob Toews