DMO(観光地域づくり法人)乱立の果てに…地方観光の救世主はなぜ機能しない?
DMOと言われて、「ああ、観光地域づくり法人ね」と答えられる人は、観光関係者か、よほどの通であろう。DMOはDestination Management/Marketing Organizationの略で、衰退する地方を訪日外国人(インバウンド)誘客で活性化しようと、国や観光庁が音頭をとって日本全国に組成を促した「観光地域づくりの司令塔」である。その数、なんと347。だが、DMOが昨今のインバウンド絶好調に寄与しているかというとそうでもない。地方誘客は遅々として進まず、インバウンドが特定地域に殺到してオーバーツーリズムを引き起こしている。そんな中、政府は2024年度予算案で地方創生関連の交付金を2000億円に倍増させる方針を発表。これがDMOの活動にどのような影響を与えるのかが注目される。DMOは現在なぜうまく機能していないのだろうか。本稿では、少数派ながら成功した事例である長野県白馬村観光局の取り組みを通じて、DMOが真の司令塔となる道を考えたい。 【詳細な図や写真】図表2:外国人延べ宿泊数の上位5都道府県と下位5県(2024年9月)(出典:国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査 2024年9月(第2次速報値)、令和元年9月分(第2次速報値)」より筆者作成)
特定地域に殺到するインバウンド
訪日外国人(インバウンド)が絶好調である。2024年1~11月のインバウンドは、コロナ前の2019年1~11月比13.7%増の3338万人と、12月を待たずに過去最高の3188万人(2019年)を更新した(図表1)。2024年1~9月のインバウンド消費も5.84兆円と、過去最高だった2023年通年の5.31兆円をすでに超えている。 2022年10月のコロナ水際対策の本格緩和以降、急速に増加したインバウンドはオーバーツーリズムなどの問題を引き起こしている。ただ、日本中どこへ行っても満員御礼というわけではなく、東京、大阪、京都などの有名観光地が押すな押すなの大盛況であるのに対して、「インバウンド?見かけたことないですねえ」という地域もある。2024年9月の宿泊統計を見ても、首位の東京都(193万人泊)の外国人延べ宿泊数は、最下位の福井県(3650人泊)の実に527倍である(図表2)。 なぜ、インバウンドは特定の地域に殺到しているのだろうか。背景に(1)地方空港に就航している国際線が少ない、(2)地方では2次交通(空港や鉄道主要駅から観光地までの路線バスや鉄道などの交通手段)が整備されておらず不便である、(3)インバウンドが団体旅行から個人旅行にシフトしており、かつてはツアーバスで巡っていた地方に行きづらくなっている、などがあるが、そもそも地方の観光地の知名度が低く、宿泊施設、多言語対応、キャッシュレス決済、多様なアクティビティなど、受け入れ態勢が整っていないという問題もある。 そこで思い起こされるのが、人口減少・産業衰退で火が消えたようになっている地方をインバウンド誘客で活性化させようと、鳴り物入りでつくられた観光地域づくり法人(Destination Management/Marketing Organization。略称DMO)である。DMOは地方誘客に成果を上げているのだろうか。 結論から先に言うと、DMOの数は増えたが、インバウンド誘致にはあまり貢献していない。なぜうまく機能していないのだろうか。