「北近江野菜」普段使い提案 隣接JAと栽培の裾野広げる 滋賀・JAレーク伊吹
隣接JAと栽培の裾野広げる
北海道JAと“普段使い”に照準を合わせ、安価な家庭向けとして野菜をブランディングするのが、滋賀県のJAレーク伊吹だ。JAの独自ブランドはあえてつくらず、隣接するJA北びわこと共に両産地の野菜を統一銘柄で売る。高単価な商材を持つ他産地とのすみ分けで競合を避け、地場産のシェアを広げたい考えだ。 【画像】産地化を進める白ネギに肥料をまく
独自ブランドの立ち上げは、付加価値や差別化で取引単価の向上が見込める一方、既に名の知れた競合産地と顧客を取り合う懸念もある。県内外でブランド野菜が続々と誕生する中、JA特産振興課の伏木幹人課長が目を付けたのが、低価格で大量取引される量販店の家庭向け野菜だ。「食べ続けてもらうには、消費者が普段使いしやすい価格帯にするのが狙い目だ」と話す。 単価が安くても売り場を広く確保することを重視したJAは2022年度、隣接するJA北びわこと事業間連携し、野菜を統一銘柄「北近江野菜」として売り出した。高単価を狙うブランド化では「栽培方法や選別、調製などの基準が増え、生産者の収入と作業負担が見合わない」(伏木課長)と判断。出荷量と産地の裾野を広げる連携の形をとった。 段ボール箱出荷も受け入れ、生産者は調製する手間も省ける。24年6月時点でタマネギやキャベツ、白ネギなど7品目を同銘柄で売る。伏木課長は「出荷量を確保すれは、価格交渉もしやすくなる」と展望する。2JAで共同輸送し、物流も効率化する。 特に、産地化を進める白ネギでは23年度、市場に出荷できる等級の制限を緩めた。A品だけの結束出荷に加え、大量取引できるばら出荷も市場に提案。1箱の値段は下がるが、B品や規格外品の、ばら出荷も実現した。 昨年、新規栽培した堀居幹さん(39)は年末、大雪でネギが折れる被害を受けたが「JAが売ってくれて痛手はなかった」という。今年は前年より15アール増の35アールで作付ける。 「北近江野菜」は、栽培や出荷の研修会も2JA合同で開く。市場や種苗会社、県などの担当者を招き、実需の評価や要望の他、環境や時勢に合った栽培方法や肥料の実証結果を共有、産地間で足並みをそろえている。 JAでは今後、生産者の高齢化を受け、苗の販売にも着手して振興を支える方針。「人手や体制の整備など課題も多いが、北近江野菜を全国に届け、生産者の手取り向上につなげたい」と意気込む。
日本農業新聞