平田晃久の建築が作る「波打ちぎわ」へ。自身が建て替えを手がける〈練馬区立美術館〉で大規模個展を開催中。
建て替えが決まった〈練馬区立美術館・貫井図書館〉の設計者となる建築家、平田晃久。その彼の個展が建て替え前の〈練馬区立美術館〉で開かれています。彼のこれまでと、これからを概観できる展覧会です。 【フォトギャラリーを見る】 「からまりしろ」というコンセプトで建築設計を続けてきた平田晃久。2005年に独立してからの主要なプロジェクトを紹介する個展が開かれている。会場は彼自身の設計で建て替えが決まっている〈練馬区立美術館〉だ。平田の個展のあと、画家の故・野見山暁治の回顧展などを開催した後に、2025年秋から建て替えに向けて工事が始まる予定となっている。
展覧会には「人間の波打ちぎわ」というタイトルがつけられており、3章に分かれた展示室はそれぞれ「からまりしろ-身体の波打ちぎわ」「響き-意識の波打ちぎわ」「響きの響き-時空の波打ちぎわ」と題されている。「波打ちぎわ」「からまりしろ」「響き」というキーワードは互いに複雑に呼応する関係だ。
「人間は動物・生物の一種であり、昆虫や動物が自然環境に“からまる”ように、建築も人間がからまる余地になるのではないか」(平田) それを平田は「からまりしろ」という言葉で表している。それは彼が独立してからずっと、そして今も考え続けていることだという。展示室1の「からまりしろー身体の波打ちぎわ」はそのことから来ている。「身体の波打ちぎわ」とは身体と建築、人間と自然環境との間にある、ゆれうごく境界線ということだ。「ひだ」や「ライン」「樹」など「からまりしろ」に関するプロジェクトが展示されている。
たとえば集合住宅・ギャラリー・レストランカフェの複合施設〈まえばしガレリア〉は1本の樹のような建築だ。上部には空中に伸びた枝のように住居があり、下部は店舗と中庭がある広場になっている。いろいろな動物が巣をかけたり、ひと休みしにきたり、葉や実を食べにきたりするように人々が集い、“からまる”建築だ。