「9日間の英国女王」 10代の少女が迫られた政略結婚と処刑、レディ・ジェーン・グレイ
「死ぬために来ました」
ジェーンとギルフォードは裁判にかけられ、反逆罪で有罪となった。それでも、命だけは助けてほしいという説得は成功したようだった。しかし、新女王の堪忍袋の緒が切れるときが来てしまった。ジェーンの父が、メアリーとスペイン王との結婚に反対する小規模な反乱に加担したからだった。メアリーはジェーンとギルフォードに死刑を宣告した。 ジェーンには、カトリックに改宗して生き延びるという道があったかもしれない。だが、ジェーンはそれを受け入れなかった。夫との面会も拒んだ。夫を愛するようになっていたと思われるが、面会後の「みじめさと苦痛」に触れ、死によって永遠に結ばれると述べただけだった。 1554年2月12日、ジェーンは夫に続いて処刑された。斧が振り下ろされる前、集まった群衆に対して、「私は死ぬためにここに来ました」と言い、罪を告白し、祈りをあげたあと、処刑人にすばやく済ませるよう頼んだという。そしてジェーンは斬首された。野心と欲望、そして歴史的な王位継承劇の犠牲者として。
文=Erin Blakemore/訳=鈴木和博