なんと「数トン級の溶岩塊」が「秒速200m超」で飛んでくる…ポンペイを「埋め尽くした」プリニー式とともに、まさに「火山を象徴」する噴火様式
新たな火山島の出現は、島を知り地球を知る研究材料の宝庫。できたての島でなくては見ることのできない事象や、そこから伝わってくる地球のダイナミズムがあります。そして、地球に生まれた島は、どのような生涯をたどるのか、新たな疑問や期待も感じさせられます。 【画像】爆発する噴火と、しない噴火の違い…マグマの噴出を決める「ガス抜き」 今まさに活動中の西之島をはじめ、多くの島の上陸調査も行ってきた著者が、国内外の特徴的な島について噴火や成長の過程での地質現象を詳しく解説した書籍『島はどうしてできるのか』が、大きな注目を集めています。 ここでは、実際に現場を見てきた著者ならではの、体験や研究結果をご紹介していきましょう。今回は、火山様式のうち、「プリニー式噴火」「ブルカノ式噴火」についての解説をお届けします。 ※この記事は、『島はどうしてできるのか』の内容を再構成・再編集してお届けします。
プリニー式噴火
以前の記事で取り上げたサントリーニ・カメニ島の噴火は、古代ローマの博物学者大プリニウスも記録に残したが、大プリニウスはイタリアのヴェスヴィオ火山で紀元79年に起きた大噴火の際、救助活動や調査を行っていた最中に噴火に巻き込まれ命を落とした。 この噴火は西暦79年8月24日正午過ぎに開始し、19時間にわたり噴煙柱を形成し続け、ヴェスヴィオ火山の主に南東側に降下軽石による厚い堆積物を形成した。噴火の後半には噴煙柱が崩壊して火砕流が発生し、古代都市ポンペイを一瞬で埋めてしまった。このできごとはいわゆる「ポンペイ噴火」として知られ、大プリニウスの甥の小プリニウスにより詳細に記録された。 ポンペイ噴火が示したように噴煙柱が長時間(数時間から数日)にわたり維持される爆発的噴火を、この噴火の貴重な観察記録を残した小プリニウスの名前をとって「プリニー式(またはプリニアン)噴火」、やや規模が小さいプリニー式噴火を「準プリニー式(またはサブプリニー式、サブプリニアン)噴火」と呼ぶ。
「松の木」に例えられた噴火
小プリニウスはポンペイ噴火の噴煙を「松の木」に例えた。彼が言う「松」は「イタリアカサマツ」で、その成木は日本でふつうに見られるアカマツやクロマツなどとは外見が異なる種類だ。成長すると途中の枝が失われ、全体として傘状に枝葉が茂るので、確かに傘型の噴煙を例えるのにちょうど良い。 プリニー式の爆発的噴火は、持続的なマグマ上昇に伴う揮発性成分の発泡により駆動される。火口からは火砕物と火山ガスの混合物が高速で噴出し続け、噴煙柱を形成する。火口直上で噴煙に取り込まれた大気が火砕物の熱により温められて膨張することにより、噴煙は浮力を獲得し大きく成長する。噴煙の高さはマグマの噴出率に依存し、噴出率が高い場合、高度数十kmに達する傘型噴煙が形成される。 防災上の観点では、火口付近だけでなく火山周辺に大量の火砕物が降り注ぐことや、ポンペイ噴火のようにしばしば噴煙柱が崩壊して火砕流を発生する場合があるため、山体からはできる限り離れた方が良い。噴煙は風の影響を強く受けるため、風上側に逃れることで降灰の影響を避けることができる。
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