早川書房からコミックレーベル「ハヤコミ」誕生!『同志少女よ、敵を撃て』など名作の漫画化が話題【編集長インタビュー】
原作とコミックのシナジー
―――私も「ハヤコミ」に登録して読ませていただいていますが、漫画を途中まで読むとこれから先がどうなるのか気になって原作を読みたくなる感じがありますね。 𠮷田:原作を読んだことがない人はコミックから読んでいただいて、作品世界に入っていただけたら嬉しいですね。例えば小説だと海外の登場人物の名前が覚えにくいというお声をよくいただくのですが、絵で表現されるとキャラクターと名前が一致しますので、漫画のあとに読まれる原作も読みやすくなると思います。 ――海外のSFやミステリ小説が多い早川書房ならではのコミカライズの効果ですね。 𠮷田:小説と漫画とのシナジーをうまく展開していけたらと思っています。 ――現在はウェブ上で読めますが、今後は紙版として単行本化していくこともあるのでしょうか。 𠮷田:タイトルによってということになってしまいますが、紙の本にできるものはできるだけしていきたいと思います。もちろんカラー作品や作画技術上で紙では難しいものは電子として大きくしていきたいですね。
今後のハヤコミ
――今後のラインナップの予定など教えてください。 𠮷田:アガサ・クリスティーの他のタイトルももちろん、まだタイトルは言えないのですがカズオ・イシグロ作品のコミカライズを予定しています。 また、オリジナル作品としては匙田洋平さんの『夜のロボット』がハヤコミに登場しました。コミカライズのほかにも海外の読者にも届くようなSF・ミステリに特化したオリジナル作品も出していく予定です。 ――最後に、𠮷田さんご自身はハヤコミをどのようなサイトにしていきたいですか。 𠮷田:アジールという概念がありまして、歴史や社会学の用語で聖域や避難場所という意味ですが、そういうサイトを目指したいと思っています。三宅香帆さんの新書の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)という本がありますけど、私も仕事中にまったく本を読めなくなった時期がありまして、ですがその時に漫画は読めたんですね。 それが仕事や家庭とはまったく別のモノに触れると救われるという、アジールというかサードプレイスのような、読者にとって「ハヤコミ」がもう一つの居場所にできればいいなと思っています。 取材・構成・文=すずきたけし