早川書房からコミックレーベル「ハヤコミ」誕生!『同志少女よ、敵を撃て』など名作の漫画化が話題【編集長インタビュー】
「ハヤコミ」スタートまでの経緯
――早川書房でコミック事業を始めるという話は以前からあったのですか? 𠮷田:実は4~5年くらい前からコミック事業の準備を進めてきまして、海外の出版エージェントと交渉して作品版権を取るのを重ねてきました。次にどのような形で発表していくか、描き下ろしから書籍にするのか、電子書籍でいきなり出すのか考えまして、やはり今の漫画はサイトで読んで面白かったら紙や電子書籍などを買うという流れがありますので、まずはコミックサイトを立ち上げようと。それがハヤコミを始めるまでの流れですね。 ――コミックを新規に立ち上げると一言で言っても、早川書房のように小説やノンフィクションなどの“文字もの”を長くやられているとこれまでのお仕事とはだいぶ違うものになると思いますが、コミックを事業として始める際に大変なことなどはありましたか。 𠮷田:私は国内小説の担当なんですが、それと同時に弊社の『SFマガジン』と『ミステリマガジン』誌上で連載されている宮崎夏次系さんと高橋葉介さんの連載漫画の担当もしていたので、心理的な負荷というかハードルはありませんでした。 ただ、やはり漫画の編集というのは小説とは段取りが違いますので、編集プロダクションさんのお力をかりて日々勉強という感じで進めています。
念願のコミック事業立ち上げ
――𠮷田さんご自身は、コミックはよくお読みになるんですか? 𠮷田:マニアの方から見たら全然遅いと思うんですけど、それまで少年・青年コミックを読んでいた高校生ぐらいの時にCLAMPさんとか高河ゆんさんのコミックが書店でバーっと平積みになっているのを見かけて、日渡早紀さんの『ぼくたま』(『ぼくの地球を守って』)とか、自分のまったく知らない漫画の世界があることを知ってどっぷり漫画にハマった感じですね。 ――なかでも思い入れのある作品はありますか。 𠮷田:高河ゆんさんの『アーシアン』(集英社)が一番好きです。高河さんは少年・青年コミックしか読んでなかった私の感性を変えてくれた方ですね。なかでも「オペラ座の怪人」を下敷きにした回(第8話「ファントム・ジ・オペラ」 )があるんですが、『アーシアン』とこの作品に感激したからこそ、元の「オペラ座の怪人」まで読むことになったんです。 まさにそういうことがハヤコミでも起きればいいなと思うんですけど。 ――そういう経緯で「花とゆめ」とか「ウィングス」といったレーベルにハマったんですね。 𠮷田:その通りです。なので学生時代はアルバイト代、会社に入ってからもお給料のほとんどが漫画になりましたね。 ――それなのになぜコミックレーベルのない早川書房に入社されたんですか(笑)。 𠮷田:KADOKAWAさんに落ちてしまって(笑)。早川書房でも漫画をやりたかったんですがほぼ漫画はないと分かっていたので、面接の時にナンシー・A・コリンズの『ミッドナイト・ブルー』(幹遙子:訳/ハヤカワ文庫FT)という吸血鬼モノのファンタジー小説のコミカライズはどうか?という話をしたりしましたね。ただその時はもちろん実現はしなかったんですけど。