早川書房からコミックレーベル「ハヤコミ」誕生!『同志少女よ、敵を撃て』など名作の漫画化が話題【編集長インタビュー】
2022年に本屋大賞を受賞した逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』のコミック版(漫画・鎌谷悠希/監修・速水螺旋人)が、12月11日に早川書房の新コミックレーベル「ハヤコミ」第一弾として全国書店で発売された。「ハヤコミ」は7月に早川書房が新たに立ち上げたコミックサイト『ハヤコミ』(hayacomic.jp)としてオープンした新コミックレーベル。これまで早川書房はSF小説やミステリ小説、翻訳小説やノンフィクションなど、いわゆる“文字もの”をメインとした出版社だったため、新たにコミックレーベルが立ち上がることに驚いた人も多かった。
早川書房のコミック事業「ハヤコミ」のスタートについて、ハヤコミ編集長の𠮷田智宏さんに立ち上げの経緯や今後のことなどいろいろとお話を伺った。
早川書房ならではのコミック戦略
――「ハヤコミ」のラインナップを眺めますと、アガサ・クリスティー原作の『そして誰もいなくなった』(漫画:二階堂彩)、スタニスワフ・レム原作の『ソラリス』(漫画:森泉岳土)といった海外の名作ミステリやSF小説、そして本屋大賞受賞作である逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』(漫画:鎌谷悠希)など、早川書房から刊行されている小説のコミカライズが目を引きます。 𠮷田智宏さん(以下、𠮷田):早川書房の作品のコミカライズが「ハヤコミ」のひとつの核としてありまして、国内で人気のSFやミステリ作品を漫画化していく予定です。 もう一つ コミック事業としては、早川書房はこれまで海外作品を数多く出してきて海外のエージェントや出版社とのつながりが強いので、早川書房が海外の作品をコミカライズしてそこからまた海外に輸出するという流れも考えています。 ――なるほど、海外作品の版権を取って早川書房でコミカライズをしてまた海外に輸出するということは加工貿易みたいな感じですね。 𠮷田:そうですね。大手他社さんは自社のコミックを日本発売と同時に翻訳して海外の読者に向けて販売するというやり方ですが、ハヤコミではそのような事業活動を通して、海外のエージェント・出版各社を応援団につけてコミックを刊行していくという考え方ですね。 ――日本のコミックは海外でもとても人気と聞きますね。 𠮷田:衰えることを知らない右肩あがりな状態ですね。早川書房では年数回、版権部の人間が直接海外に版権を買いに行くんですが、その時に日本の出版社だからか「集英社の漫画の部署を紹介してくれないか」と言われるらしいんですよ(笑)。